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書評 東京外大 東南アジア学 第20巻 


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 東京外国語大学外国語学部東南アジア課程研究室が編集・発行する「東京外大 東南アジア学」の冊子は、今年で発行以来第20巻(20年)を数えた。平成26年度に査読制度を導入し研究者や専門家による評価や検証を受けることになったことで、多くの人々が関わり、投稿から発行までに要する時間も長くなったことが書かれてある。しかし、その分、内容は一層深く、広く、より学術的になったことだろうと期待するものである。この第20巻は、東京外国語大学2014年度総合国際学研究院特別経費(競争的経費)の助成を受けて発行されたとあり併せてお祝いしたい。
 私と同東南アジア課程研究室との関わりは、東京外国語大学を卒業した私の友人が15年ほど前にベトナムを訪問して講演した際の記事を米沢日報紙元旦号で特集したことがきっかけで、同研究室の教授から米沢日報に電話があり、以来、毎年のように同誌が送付されてくるようになった。私自身、27年前に東南アジアの国であるマレーシアに3年半ほど住んだことがあり、その際に近隣の国々を旅行する機会があったので、本誌を手にすることでその見聞した記憶が甦ってくるようであり毎年とても楽しい思いで読んでいる。
 さて、第20巻では、論文が2編、研究ノート4編、ほかに資料が掲載されてある。論文では、最初に村上雄太郎、今井昭夫の両氏が「現代ベトナム語における漢越語の研究(6) 日本人学習者から見た漢越語の声調とその用法に関する諸問題」と題して投稿されている。漢越語とは、ベトナム語の語彙の中に、中国や日本の漢字が起源になっている語を言い、日本語の漢字と意味や発音で類似性がある。
 例えば、「使用」のような二音節語の漢越語の場合、「用」の部分が、単独で使用した場合に、声調(声の抑揚)が変わってしまうもの(Ⅰ類型)と、「種類」の「類」のように、変わる場合と変わらない場合があるもの(Ⅱ類型)があるなどを説明している。そして、そこに声調転換の一種の規則性について言及した。
 次の論文は、野村愛氏による「就労3年目のフィリピン人介護福祉士候補者に対する学習支援ー介護福祉士国家試験合格までの課程」と題したもので、経済連携協定(EPA)に基づいて、日本に対して2008年のインドネシアを皮切りに、フィリピン、ベトナムの3か国から看護、介護人材の受入が始まったが、せっかく来日したものの、日本の国家試験に合格できず帰国を余儀なくされるケースが見受けられ、問題となっている。語学力不足が原因の一つとも聞く。筆者は「介護福祉士就労コース」のフィリピン人介護福祉士候補者に対する学習支援を取り上げ、候補者が介護福祉士国家試験に合格し、介護福祉士として施設で継続して就労するためには、どのような日本語教育が必要か、研究を行った。まさに、日本の高齢化社会の基盤を支える外国人の教育と人材確保の観点からも、このような研究がなされたことは時宜を得ていて、極めて大きな評価に値するものと考える。
 研究ノートでは、「保護国カンボジアークメール語紙『ナガラワッタ』に見られ るフランスの存在ー」、そして「日本人タイ語学習者の発音問題と指導方法に関 する一考察」に加えて、現地語によるラオ語のことわざの研究とクメール語の名 前の研究が掲載されている。また資料では、古典ジャワ文学史の翻訳連載と、平 成26年度提出の同東南アジア課程卒業論文・卒業研究題目一覧、同修士論文題 目一覧が載っている。
 日本はアジアの国々の一つであり、アジアとの一層の連携が求められる。そのためには東南アジアの言語や政治、経済、文化などの理解を深めることは言うまでもない。そしてアジアのパワーが益々増大していく中で、アジアの視点から世界を見るという方法論の一つに、「東京外大 東南アジア学」の本誌が大いに役立つものと期待が高まる。(成澤礼夫記)
書   名 東京外大 東南アジア学 第20巻 2015年
発 行 日 2015年3月31日
問 合 せ 〒183−8534 東京都府中市朝日町3−11−1
      東京外国語大学外国語学部東南アジア課程研究室
(2015年5月8日19:15配信、5月11日15:50最終版配信)