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書評 木口政樹著「アンニョンお隣さん」  


annyon ここ何年か、日本・韓国政府間では、竹島(韓国名独島)問題や従軍慰安婦問題などが懸案事項となり、首脳同士の接触ができないという外交上の緊張状態が続いてきたが、日韓修好五十周年にあたる昨年、従軍慰安婦問題についてはギリギリ12月に日本・韓国政府間でその解決への合意形成が図られ、今後、曲面の打開が図られそうな様相である。
 しかし、「冬のソナタ」の際のあれほどの日本人の韓流ブームがどこに行ってしまったのかと思えるくらい、いま両国間に横たわる感情的なわだかまりは容易には払拭できないように思える。
 そんな中、日本語教師として韓国に27年間暮らし、韓国人女性と結婚している米沢市出身の著者が、韓国の生活と魅力を存分に紹介する本「アンニョンお隣さん」を発行した。現職は韓国天安市にある白石大学校教授である。
 「アンニョン」とは、「こんにちは」の意味であり、「日本と韓国は隣同士だから仲良くしようよ」という著者の心からの呼びかけが伝わってくるようだ。著者はこの本が「隣を考え、アジアを考え、世界を考えるなんらかの起爆剤になることを希う」と述べている。
 第一章では、著者が韓国に来て日本語教師になった経緯を述べる。1988年に、高麗大学校の語学堂で韓国語を学び始めた。語学堂は大学に附属している語学を学ぶための機関である。そこから三星グループの総合研修院で日本語教師として働き、その後、大学院に通いながら大学非常勤講師として講義を行い、2002年に白石大学校に転勤して助教授に就任したことなど、自伝的な内容である。
 第二章では、韓国語の「ヨク」は、日本語の「てめえ」「あほ」「おたんこなす」のような相手を罵る言葉であるが、日本語にはこうゆう言葉をひとくくりで表わす単語がないという。韓国語では、ケンカにも、呪いにも、叱られる時にも、情の通い合いにも使われ、生活の潤滑油として使われる側面があるそうだ。
 ハングルとひらがなに関する考察も面白い。ハングル文字は、1446年に世宗大王(セヂョンデワン)によって作られたものであるが、ひらがな、カタカナはいつ、だれによって作られたのかはっきりしない。この素性は、日本語と韓国語、また日本と韓国(文化)を象徴していると著者は考える。区分けされ、はっきりしているものをディジタルといい、曖昧なものや明瞭でないものをアナログといったりするが、その点からすれば、ハングルはディジタルであり、ひらがなはアナログだと述べる。韓国人のものの言い方のダイレクトさに、著者もカチンとくることがあったという。しかし、これは韓国語も同様の傾向があると述べる。断る時にも遠回しな言い方をして、相手を傷つけまいとする日本人の心との対称性を表わしている。この点を知っていると、韓国人が激情型であると言われる理由が何となく理解できる。
 韓国の医学の章では、ハリ治療や韓医学と西洋医学を比較しながら紹介する。韓国文化の個性十傑として、著者があげるのが「韓医院」。そこではハリを打ってもらい、韓薬を処方してもらう。その体験を記している。
 最後の章では、韓国の自然と地理について紹介する。白頭山は、韓国民族にとっては心の故郷のような山。韓民族の親神様とも言える檀君(ダングン)が生まれた山として有名であるが、韓国の歴史はこの檀君から始まる。西暦の2015年は、檀紀では4348年となる。
 白頭山は2750メートルで、朝鮮半島の山では一番高い。一年のうちで、8か月は白い雪に覆われている。ほかに、韓国の四季、花、各道(州または県のような最上位の行政単位)についても紹介している。
 本書はこれから韓国を知ろうという人にはもってこいの書である。韓国の大地に根を張って生き、青山(死に場所)と考える筆者が、米沢人気質で公平な視点と忍耐強い感性で、本書を書き貫いている。(文 成澤礼夫)

著者 木口政樹
発行 花伝社
発売 共栄書房
ISBN978-4-7634-0764-1 C0095
定価 1500円+税

(2016年1月2日15:55配信 )