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書評 「越後戊辰戦争と加茂軍議」稲川明雄著


mamo16 新潟県加茂市は、昔から「越後の小京都」と称せれ、加茂川がまちの中心部を流れ、三方を山並みが囲む景観が京都を思わせる美しいまちである。しかしながら、バブル崩壊以降、全国の地方都市が人口減少や経済の活力を失いつつある中で、同市も同様の問題に直面し、中心市街地の活性化が地域のコミュニティーを維持する上で必須の課題となっている。
 新潟県加茂商工会議所(太田明会頭)は、全国でまちづくりに成功している事例を調査、研究した結果、現在繁栄している商店街のほとんどが、観光客が訪れるまちであるという現実を知った。独自性を持ったまちづくりとは何か、と言う問いへの答えの一つが「加茂の歴史」という資産だった。
 そこで同商工会議所は、平成23年度から中心市街地活性化支援を重点事業に掲げ、交流人口増加に向けて、同市の観光資源の調査研究や歴史を活かしたまちづくりとして、年間30万人が訪れる加茂山の魅力を市内外へ発信するため、「加茂山古道散策マップ」、「加茂山城鳥瞰復元図」の発行や、加茂の歴史を解説した「史跡モニュメント」を市内6カ所に設置などで観光客誘致に取り組んできた。
 このほど、中心市街地活性化プロジェクトの一環として、戊辰戦争における奥羽越列藩同盟と加茂の関わりや、長岡城奪還への道のり等の歴史的背景を記した書籍『越後戊辰戦争と加茂軍議』(著者 河井継之助記念館 館長 稲川明雄氏)を発行した。同商工会議所は、平成30年が戊辰戦争150年となることから、この本が全国の歴史愛好家や河井継之助ファンが、加茂市を訪れることを期待している。
 加茂の歴史のハイライトは、戊辰戦争の際に東北に上って攻め入る形勢を見せた官軍への対応を図るため、奥羽越の各藩重鎮が集まり、加茂軍議が行われた場所であり、事実上の奥羽越列藩同盟が結成された場所と言うことができる。長岡藩軍事総督の河井継之助がここでリーダーとして頭角を現し、長岡城奪還に向けた戦略を練り、その足掛かりとした。
 著者の稲川明雄氏は、昭和19年、新潟県長岡市に生まれ、長岡市史編さん室長、長岡市立中央図書館長を歴任、現在は長岡市河井継之助記念館の館長である。これまでも『長岡城燃ゆ』(恒文社)1991年を始め、長岡藩や河井継之助、山本五十六、小林虎三郎などについて、10冊を超える著書があり、河井継之助を書かせたら、この人に右に出る人はいないという存在である。
 そして、加茂商工会議所が稲川明雄氏に執筆を依頼してできたのが本書である。戊辰戦争に関しては、これまで色々な本が出版されてすでに多くのことが書かれてきているが、稲川氏は新たな史実の発掘で、加茂での戊辰戦争史に新たな光を当てた。
 本書は第一章「加茂の勤王」、第二章「加茂軍議」、第三章「討薩ノ檄と長岡城奪還」に分かれている。その内容は、とりわけ、第二章では、加茂軍議を前後して実に緻密に描かれてある。第三章では、米沢藩士雲井龍雄が書いた「討薩ノ檄」は奥羽越列藩同盟の理論的支柱となったものであるが、この文章が加茂で書かれたことは米沢に住む者にとっても知る人のみぞ知ると言う状況で、本書を読むことで加茂が米沢にとって決してよそのまちではない事に気づく。
 本文は、登場人物に色々と話をさせている。歴史の解説本にありがちなお堅い内容ではなく、読者があたかもその場にいるような臨場感を感じさせてくれる筆致で、ぐいぐいと引き込まれていくようだ。戊辰戦争について新鮮な視点を与えられた気がする。
 なお、平成28年9月25日(日)午後2時より加茂市産業センターホールにおいて、「越後戊辰戦争と加茂軍議」と題して、著者の稲川明雄氏による出版記念講演会を開催する。参加料は無料。電話または、FAX、メールで申し込み要。
 加茂商工会議所 TEL0256−52−1740 FAX 0256-52-4100 mail : info@kamocci.or.jp

(評 米沢日報デジタル/成澤礼夫)

著 者:稲川明雄
発行者:加茂商工会議所
編集・発売:新潟日報社
発売日:平成28年9月14日
定 価:(本体1,500円+税)

(2016年9月14日15:15配信)