newtitle

書評 「杜」第39号   


mori39 杜の会(清野春樹編集・発行人)が発行する同人誌。会員は主に山形県内だが、富山県高岡市、岐阜県鷺山市の会員2人も寄稿している。第39号では詩句2編、小説5編、エッセー等7編が収められている。
 小説の「少年信長(第二部)十四歳つづき(その一)」は、本書で44ページ、原稿用紙では140枚近い膨大なもの。少年織田信長を取り巻く斎藤道三をはじめとする戦国武将たち、そして信長に尽くす女性との夜の描写。鉄砲を使った信長の戦さの場面では、そこに居て戦さを見ているような臨場感など、歴史小説の醍醐味を満たすドラマチックさがある。地理的描写にも極めて優れ、住所を見たら岐阜県鷺山市とあり、納得。著者はしもじあきら氏、素晴らしい才能を感じる。
 古代史、中世史、近現代史、さらには民俗学とジャンルやテリトリーの幅広い清野春樹氏。平成28年夏に開催した米沢納涼水上花火大会(米沢日報デジタル主催)では、アトラクションで「ジャンバラヤズ」という名の音楽グループを率いて、フォークソングを歌って頂いた。今回の作品は、「ジャンバラヤズ・ゴー・オン」。同氏が音楽への造詣も極めて深いことを改めて知らされた。日米の音楽の違いを宗教的根源に理由を見出している。
 山形市の羽島ナオミさんは、これまでイタリアの古代史に因む小説や同国への旅行記などを書いてこられたが、今回は「On the bed」。本人曰わく、「とってもイミシンなタイトルだが、決してあのこと、ベッドの上でのホモサピエンス同士の格闘を書くつもりは、私にはない。」の始まりで、一本技あり。どうしたのかといえば、孫の誕生で尋ねた長男の家の風呂場で、掃除中に転倒して左足を外側に「く」の時に曲がるほどの骨折をしたこと。入院、手術、リハビリなどの経過を懇切丁寧に述べ、写真付きで解説する。「人生いつ何があるかわからない!」とエピローグで述べているが、その中で日本の医療の凄さ、この経験から普段目にする光景も違ってきたという。
 北条剛氏の「ミシガン湖の風に吹かれて」は、アメリカの五大湖の一つの湖のほとりに立ってのエッセー。娘夫婦が住むシカゴを訪れた著者は、そこの自然や人々の暮らしぶりをつぶさに見ている。彼の地で日本人が苦労するものの一つにチップという慣習がある。一体、いくら渡せばいいのか、読者にとっては大いに刺激を与えてくれる話題である。リカルド・ムーティ指揮の演奏では、著者の近くの席で大きな咳をしたことで、指揮者は演奏を停止し、再びやり直すという貴重な体験もした。
 高岡市の紅谷霜葉さんの「富山からの便り」は、いろいろな美術館巡りの様子や、糖尿病を持つご主人のために作る料理に関してのご苦労、また加賀料理の美味しい話も。話はさらに弾んで拓本に至る。
(書評 米沢日報デジタル/成澤礼夫)

編集・発行人 清野春樹
発行所 杜の会
発行日 平成28年12月15日
頒布価格 1,000円(税別)  
問い合わせ 清野春樹さん(電話 0238−23−1729)

(2017年1月19日18:35配信)