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書評 『森に魅せられて』 渡部幸雄


mori18  川西町在住の渡部幸雄氏が4月1日、「森に魅せられて」を発刊した。
 この本は、渡部さんが人間生活と環境との関わりを理解し正しく対処できるように、地球と環境について総合的に考えてみたいという意図でまとめられたものである。環境問題を科学的に理解するため、地球の歴史的な一断面として現在の地球環境をとらえ、その中で人類の活動の影響を考えていくという。そのアプローチとして、エネルギーの流れを把握していこうとしている。
「問題の全貌をつかみ、進むべき方向を見出すことは容易ではない」と著者は述べているが、地球の環境を構成している要素、要因を徹底的に調べ上げ、まとめた労作である。
 本書の内容は、「植物総論」、「水の環境」、「土の世界」、「昆虫の話」、「菌類の世界」の全5章、109のテーマ(本文386頁)から構成されている。第1章の「植物総論」では、森の出現と人と関わり、温室効果が及ぼす生態系への影響などについて触れている。出羽三山など、山と宗教、文化、民俗学とのつながりにも言及している。第3章の「土の世界」では、長年にわたり、農業、畜産の仕事に携わってきた渡部氏の視点が色濃く反映されている。「農業は土づくり」と言われるほど、土は大事なもの。その土が酸性雨によって影響を受けている。また福島原発事故によるセシウム放射能汚染により福島県を中心に農産物に被害が出たが、その汚染対策のための実践的な農業技術についても紹介する。
 渡部氏は、あとがきの中で、「生態系には多くの機能と価値が存在する。他の多くの生物と非生物的環境がお互いに関係し合って存在している。また、環境は多面的な機能を果たし、多面的な価値を有している。木や森の緑に代表される豊かな自然の生態系こそ、生物多様性のさまざまな働きが、環境を改善する第一人者であると思うのである」と述べている。
 渡部氏のその考え方に全く同感である。自然の生態系はある程度まで自己回復力を備えているが、人はその生態系を破壊してはならないし、自己回復力を超える破壊を行えば今度は自然の生態系からのしっぺ返しを受けることになる。ある文化人類学者は、聖書創世記にある「人が地を治めよ」というキリスト教的世界観に基づいて、人が地球の生物界の頂点に立っているという驕りは改めるべきだろうと述べている。人もまた地球環境に生かされているのである。宇宙船地球号は人以外の生物も一緒に乗っている。それらの生命もまた生きていく権利があるのである。
 川西町文化財保護協会役員としての活動経歴と、趣味のカメラを持って古代から現代までの史跡などの現地調査を踏まえた豊富な資料、知識が凝縮された一冊であり、渡部氏は同町屈指の学究の人である。(書評 米沢日報デジタル/成澤礼夫)

著 者 渡部幸雄(川西町)
発行所 創栄出版(株)
発行日 平成30年4月1日
ISBN978-4-7559-0576-6 C0095
    非売品

(2018年4月14日11:50配信)