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書評 「杜 第41号」


mori41 杜の会(編集・発行人 清野春樹氏)が発行する同人誌で、現在、会員は14人が名前を連ね、県外からも2人が加わっている。本当に、ものを書くことが好きな人たちだ。
 同会は誰でも入会でき、入会費なし、年会費1万円と、同人誌「杜」に寄稿する際は、小説、エッセイ、詩、戯曲、俳句、短歌、絵画、彫刻、書など原稿枚数(写真や画像も含む)によって負担をするというわかりやすい形で運営されている。
 第41号では、詩句が2人、小説6人、エッセイ・思索等4人が寄稿した。
 松尾到さんの「僕たちは食べないと生きていけないから」と題する詩が面白い。「人はパンのみにて生きるにあらず」とは聖書の言葉だが、人はやはり、食べないと生命を維持できない。だから、松尾到さんは「農薬の入ったキャベツや防腐剤たっぷりのおにぎりなんかをたくさん食べる」し、「農薬の入ったキャベツみたいな詩をたくさん食べる」、「防腐剤入りのおにぎりみたいな言葉を腹いっぱい食べる」のだという。しかし、食べることにのみ執着し、それが安全で健康的かという視点を欠如してはならない。情報があふれる現代、実は詩や言葉も健康的でなければならないということかもしれない。
 柴宏さんの小説「愛海ーNARUMIー」は、50代なかばの女性愛海が癌で亡くなる前に、学生時代に同棲した後に別れた男、菅に手紙を認める。そして菅と同棲していた時にできた子供文彦に、自分の葬儀の後に訃報の知らせを頼んだと書いてよこす。
 ストーリーは、学園紛争時代を背景にして、3人の学生時代のことが展開していく。後に銀行マンとなった菅とその友人で大学教授となった磯治、愛海は同じ大学で、学生運動のデモが出会いだった。学生時代に愛海と同棲していた菅が、愛海との別れについて磯治に語りだす。それは「家」や一人息子と酒蔵の一人娘という壁である。そして愛海は菅の前から姿を消してしまった。
 訃報をもらって、菅は磯治に愛海の墓参に同行してほしいと頼み、一緒に出かけていく。そこで見たものとは。。。。
 評者の私は、愛海の家のある鶴岡市大山の隣、善宝寺というお寺のある下川の出身であるから、大山の舞台がまぶたに浮かんでくる。しかも、学園紛争時代も評者は経験した。家と家の結婚という社会風習の強い土地柄であることもわかる。私にとって、この小説は私の同時代の感覚が共有できて、面白く読ませていただいた。
 しもじあきらさんの「少年 信長(第4部)」、羽島ナオミさんの「ローマ遺跡in 英国」も読み応えがある。(評者 米沢日報デジタル/成澤礼夫)
 
発行所 杜の会(編集・発行人 清野春樹)
    米沢市城西3−9−6
    TEL 0238−23−1729
発行日 平成30年11月30日
頒 価 1000円+税

(2019年1月22日13:20配信)