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書評 『茶席の禅語』 石田哲彌著


zengo 平成30年(2018)は、戊辰戦争150年の年だった。慶応4年(1868)、米沢藩からも越後(新潟県)方面に出陣し、新政府軍と熾烈な戦いが繰り広げ、280名を超える戦死者を出した。
 米沢市で米沢牛のレストランを営む私の友人の高祖父と母方の先祖の二人は、越後長岡での戊辰戦争で戦死した。友人の家では、これまで150年というもの、誰も戦死地に赴いたことがなかったと言う。戊辰戦争150年という、何かの縁だということで私たちは慰霊に出かけることした。戦死した場所は、一人は長岡市大黒町、もう一人が長岡市栃尾である。大黒町の場所はすぐに判明したが、長岡市栃尾の方は戦死地らしい場所が見当たらないことから市の観光課を訪れた。地元に歴史に詳しい方がいると教えられたのが、曹洞宗瑞雲寺、長福寺住職の石田哲彌師である。寺に残る米沢藩士が書いた絵など、戊辰戦争のゆかりの遺品を見せて頂き、石田師とは一期一会の貴重な出会いをさせて頂いた。
 その石田師、実は新潟県では新潟県史編纂委員、栃尾市文化財審議委員会会長をはじめ、栃尾観光協会顧問、日本民俗学会理事、日本石仏協会理事などを務め、僧侶として、また歴史、民俗、宗教、和算の専門家だった。
 その石田氏から6月に私の元に送られてきたのが、石田師が著された『茶席の禅語』である。茶道雑誌『石州』に長年連載してきたもので、40の禅語を紹介している。これらの禅語は、茶の湯と関連する語が集められており、しばしば茶席の掛軸で見かけたり、僧侶の話の中に出て来るものもあるから、その意味を知っておくことはとても意味深いと思う。茶の湯の席にふさわしい茶掛けによって、茶の湯は一層味わい深いものとなる。
 本書の中で紹介しているものに、「菩提心」、「布施・愛語」、「不識」、「諸行無常」、「本願」、「喫茶去」、「老婆心」、「一期一会」、「脚下照顧」など、良く言葉として知られているものがある。石田師の解説によって、これらの言葉の深い意味を知ることとなった。
 各項目では、安藤俊英師(曹洞宗長興寺住職、牧野家家老の菩提所、山本五十六元帥の墓所)の書が掲載されている。石田師はその禅語との出会いやエピソード、仏教的な由来、物理、数学の教師をしていたというだけに、フェルマーの定理、級数、オイラーの予想などの物理や数学的な解説が加わって、著作はまるで宇宙的な広がりがある。この本は並の禅語の解説本ではない。読む者の高い理解力をも要求しているのだ。
 例えば、「喫茶去」の部分では、「喫茶去」は私にとって至福の一時である。無の空間でケプラーのように奇人変人の世界をさまよってみることがよくある。今回も途方も無い挑戦となってしまった。世界の数学者から非難の声が寄せられるだろう。……
 本書を読んで、私は石田師が途方もない頭脳の持ち主だということに気づいた。しかし、会って話してみると実に親切、気さくで、ユーモアに溢れ、そのようなことは微塵も感じさせないのである。「能ある鷹は爪を隠す」とは、石田師にピッタリなことわざだと思った。

書評 成澤礼夫(米沢日報デジタル社長)

著 名 茶席の禅語 講座 禅語の妙味
    数学・物理・生命・歴史から禅語の醍醐味を味わう
著 者 石田哲彌
発行所 (株)考古堂(新潟市)
定 価 2000円+税
発行日 令和元年5月30日

(2019年7月21日17:45配信)