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書評「スピード経営が日本のものづくりを変える」


           NECパーソナルコンピュータの米沢生産方式と原価管理

speed 1990年代から、日本のものづくりが人件費をはじめとするコストの安い中国にシフトして、日本における産業の空洞化現象が起こった。それは単に生産が海外に移動しただけでなく、日本のお家芸といわれた金型製造を始めとする大事な技術の移転という大きな問題が含まれていた。日本がこれからものづくりを続けていくためには、何が必要なのか?残された強みとは一体何なのか?製造に関わる人たちの将来に対する懸念は言語に表しがたいものがあった。しかしこの流れが2010年頃を境に変わってきている。日本国内でのものづくりが見直されて始めているのである。日本企業は国内でものづくりをしながらコストをはじめとする世界との競争に勝ち抜くためのいろいろな戦略を編み出してきたのである。海外でなく、日本でものづくりをする意義や利点、そしてその実現のためには、どんな課題をクリアしなければならないのか。そのヒントが本書の中に書かれてある。ものづくりの発想は製造業だけでなく、サービス業に関わる人にも大いに参考になるものである。
 本書はNECパーソナルコンピュータ(株)が著者となり、発行されたという極めて特殊で面白い出版である。同社が取り組んできた革新的な生産方法を徹底的に、あます所無く、さらに言えば本書を目にするライバルにも惜しみなく紹介していることだ。同社は2011年P C世界シェア1位(2014年12月現在)のレノボとのジョイントベンチャー体制を築き、レノボの調達力とNECの生産技術力によって強い事業体質に変わった。それは平成27年2月からレノボの「ThinkPad」の一部がNECパーソナルコンピュータ(株)米沢事業場で生産が開始されたことに象徴されている。
 NECパーソナルコンピュータ(株)では「米沢生産方式」と呼んでいるが、これは「生産技術、IT、財務管理手法を駆使して、徹底的な効率化、スピード向上、品質向上を実現し、継続させている、米沢事業場におけるものづくりの方式」と定義している。同社米沢事業場では、2000年頃から自分たちのものづくりのあり方を徹底的に見直してきた。それは「コストパフォーマンス」に加えて、「スピード」という付加価値を付けることである。その結果、2万種類という機種を受注から最短3日でお客に届けるという体制を構築した。NECパーソナルコンピュータ(株)は、2014年においても日本市場のデスクトップパソコンとノートパソコンのシェア・ナンバーワンを維持している。そしてスピード感あるものづくりのためには、自然で無駄のない動きのものづくりの「流れをつくる」ことが大事な感覚だと述べている。第一章で「米沢生産方式」の概要を紹介する。第2章は「生産革新」として、ジャスト・イン・タイム、作業のムダの排除、リードタイムと経費を削減させる物流改革、第3章は「先進的IT活用」。第4章が「ものづくり財務」として、米沢式原価計算。第5章「成果の拡大」として、「1日修理」の概要とその実現について、第6章「人財育成」、第7章「国内生産」となっている。
 本書から学ぶことは大きい。ものづくりのあり方はどうあるべきか、製品の付加価値の付け方はどうあるべきかなど、日本のものづくりの再生のための秘訣が満載である。そして本書の最後に、「われわれは〝米沢スピリッツ〟を持ち続ける」、という一節がある。顧客満足No.1、スピードNo.1、シェアNo.1の3つであり、これを達成するには、人財が不可欠としている。NECパーソナルコンピュータ(株)米沢事業場の挑戦は、日本のものづくりの再生の大きな起爆剤となると思われる。
著 者 NECパーソナルコンピュータ株式会社  発行所 東洋経済新報社
発行日 2015年1月22日 ISBN978-4-492-50268-6 C3034
    定価本体1600円+税
編集協力 NECパーソナルコンピュータ株式会社広報部
(2015年4月16日17:55配信)