川西町文化財保護協会(伊藤義隆会長)は、昭和57年に設立され、これまで40年にわたり、川西町内の文化財保護活動、資料や報告書の発行などに取り組んできた。川西町内には、多くの有形無形の文化財が残されている。このほど、同協会設立40周年記念事業として、『地域に伝わる文化財』と題する冊子が発刊された。本冊子には、300点あまりの文化財を取り上げられている。
同協会は、川西町の石碑、石仏『祈りの碑』を9年前に発行し、大きな業績を残しているが、本書はそれに続くもので、先人たちが生きた証や、当時の宗教、生活、民族的な歴史、風土などを知ることができる内容。
編集委員会委員長の藤田宥宣氏は、「会員の減少、地域住民の減少、日本全体の少子化は、雪の多い中山間部に住むものとして、地域文化の継承の危機は、最たるものであります。」とし、「次世代に如何にして地域文化を伝えるかが最大の問題であると言えます。」と指摘している。文化財を調査、保存する担い手が不足している中で、川西町は文化財全般が大きな危機に瀕しているという認識のもと、社会全体で支えていく体制を構築しようとしている。
さて、第1章では小松、中小松、大塚、犬川、高豆蒄、中郡、玉庭、上奥田など、地域ごとの文化財を紹介している。そこには遺跡や古墳、神社、城址、絵図、伊勢道中記、板碑などがある。
第2章では、川西町内の神社に奉納された絵馬を紹介する。川西町交流館「あいぱる」の資料展示館に展示されている道伝遺跡出土の絵馬は、現在、日本最古のもので、同遺跡は奈良時代から平安時代にかけて郡衙(郡役所)跡とされている。この絵馬は奈良時代のものと推定されており、同時代のものは川西町のものを含め、全国3カ所で発見されている。古代、神への生き馬献上の習俗から、馬形奉納、さらに板絵となったとされる。絵馬にはお寺の観音堂に掲額されたものや、神社に飾られたものが多い。
第3章では、各地区で大切にしたい文化財を紹介する。寺、神社、酒蔵の建物、石碑、獅子頭、杉の木、炭焼き小屋、茅葺屋根を持つ古民家、小学校など。
参考資料1として、会報「かわにし文化財」の表紙を創刊号から第67号まで掲載した。参考資料2では、川西町にある国指定文化財である「染付飛鳳唐草文八角瓢形花生」(昭和32年指定)や、下小松古墳群(平成12年指定)など3点、国登録文化財として、樽平酒造主屋(平成9年指定)など4点、県指定文化財24点、川西町指定文化財として27点の一覧を紹介した。
この冊子を見ると、川西町が如何に歴史の宝庫であることが分かるとともに、宝の多さとその規模に圧倒され、否応なく郷土に愛着を感じるようになるだろう。(書評 成澤礼夫)
編 集 地域に伝わる文化財 編集委員会
発 行 川西町/川西町文化財保護協会(川西町交流館「あいぱる」内)
発行日 令和6年3月29日