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不可能を可能とする若きプロフェッショナルたち

 県立米沢工業高校(大津清校長)の全日制生徒が研究・開発を行ってきた化石燃料に依存しないゼロエミッションプロジェクトの達成から1年が過ぎようとしている。風力発電や太陽光発電、そして蓄電装置を兼ね揃えたエコ車庫とともに、2010年12月、お披露された高校生発のEV(電気自動車)「MEーⅢ」のデビューは山形県からも表彰を受けるなど、米沢市民をはじめ、多くの人に衝撃と感動を与えてくれた。

 同校では平成23年度から「3か年ものづくり計画」を新たに発表し、これまで研究を行ってきた計画に加え、スマートグリッド研究から、スマートフォンを活用した育成システム、さらには第2弾となるEVの製作と、これまでにない全く新しいプロジェクトが幕を開け始めた。分野を越え、卓越した計画は、米沢のものづくり産業にきっと夢と希望を与えてくれるに違いない。

 今回8つのプロジェクトを進めていくなか、特に力を入れているのはスマートグリッドの研究・開発だ。これまでの太陽光発電や風力発電に加え、農業用水を利用した小型水力発電、自然界の有機物からバイオマス燃料やエネルギー利用に関する研究をしている。将来的には自然エネルギーを兼ね揃え、発電から蓄電、EVへのエネルギー供給など、需給バランスをITで管理するマイクログリッドシステムを取り入れたスマートエコハウス構想も計画中という。

 作るだけではなく、エネルギーの地産地消に向けた新たな取り組みも期待されているほか、EVも新しいカテゴリーの車種に挑戦し、2号機の製作に着手する。現在検討されているのは、雪国や福祉車両への対応化。既存のEVも改良しつつも、地域ニーズにあった車両を作っていきたいとしている。

 一方で、最先端技術の取り入れたシステム開発も行っている。モバイル端末(スマートフォン)を使い、遠隔操作による散水や温度管理といった植物育成システムの研究も進めるなど、ITを活用したものづくり拠点の形成へと動き出した。また、これまでのプロジェクトにも変化が見られる。平成19年度から同校専攻科が生み出した夜間でも足下を明るく照らす「車いす照明」では、フットプレートにLED、有機ELを取り付け、商品化、製品化に向け、特許出願し公開特許となっている。今後は福祉施設や病院等で検証を行い、更なる利便性の向上に努めていく予定だ。

 さらには、夜間通学を行う定時制ならではの自転車に取り付ける点灯ライト「自転車通学安全グッズ」も昨年度、山形県発明くふう展で特別賞を受賞。現在のところ第一弾から第三弾まで、自転車の前後左右に取り付け可能な三種類を発表している。そのほか、米沢で採れる鉱物で、福島第一原子力発電所事故の放射能汚染水処理に使用されるなど、放射性物質への効果、検証が行われているゼオライト(沸石)を衣類や紙に固着化させ、新たな活用法を研究、商品化させるゼオライトプロジェクトの8事業が3か年以内の目標達成へと進められている。

 地元自治体や企業、大学と連携した産学官民事業として、米工生発の未だかつてない〝壮大なプロジェクト〟が今、スタートした。

 

地域の持つ教育力を活かす、産学官連携によるものづくりへ

米沢工業高校 大津清校長

ーー8つのプロジェクト「ものづくり計画」が昨年からスタートしていますが、どのような計画、狙いがあるのでしょうか。

 本プロジェクトは、米沢市ものづくり地域産業化研究協議会からご支援をいただき、平成23年度からスタートしました。これまで行ってきた内容から、全く新しいプロジェクトもあります。高校生が研究や開発、事業に取り組むことで、ものづくり産業に貢献できる人材、地域社会の活力増進に寄与できる人材の育成、また小中高の先駆的な技術の講習会(大会)を通して、次世代産業の担い手づくりを目指しています。
 
ーー水力やバイオマス発電、スマートグリッドシステムといった分野は、これまで日本であまり研究が行われていないように感じます。

 河川やダムといった大型のものではなく、現段階では農業用水路に設置が可能なマイクロ(小型)水力発電を計画しています。発電量は小さくなりますが、設置コストが低く、学校の近くの水路で研究、開発ができるというメリットがあります。また、バイオマスですが、廃材や木屑など、米沢やどこにでもある身近な有機物から燃料の生成することで、生徒たちのエネルギーへの理解を深めてもらいたいと思っています。

 生徒からは「コンポストから出る発酵熱で発電できないか」という意見もあり、模索しているところです。

 現在、建っているエコ車庫の脇に、昨年から地下24㍍ほど掘削し、年間を通じ約14度の一定で夏は涼しく、冬は暖かい地下熱を利用した空調と、太陽光、風力、水力といった自然エネルギーで発電、蓄電できるスマートハウスの建設を最終目標としています。企業でも研究されている分野ですが、自らが手掛け、完成させることで生徒自身も自然やエネルギーの大切さを理解する上で、技術の意識付けとなることと考えています。

ーー多くの卒業生を輩出し、米沢のみならず、東北、日本全国各分野で活躍しています。人材育成をする上で、重要なことを教えて下さい。

 地域の発展を支えるのは、ものづくりにあると考えています。今までは学校という内側においてモノを作ってきましたが、これからは地域の持つ教育力、そして繋がりを活用した人材育成が重要です。より専門的な知識を持った方々(企業人など)から直接指導を受け、学ぶことで、作り上げたモノの完成度は飛躍的に高くなります。また、外部との交流は、技術の習得だけでなく、生徒のコミュニケーション能力を養うことにもなり、このことが地域のものづくり産業に貢献する人材になり、地域活性化に繋がるものと信じています。

ーー市民への抱負、メッセージをお願い致します。

 電気自動車の製作において、米沢市内の企業に多大なるご協力を頂きました。これからもものづくりを通して夢を持ち続け、地域の支えとなれるような人材の育成、米沢そして置賜地域に貢献したいと思いますので、ご協力をよろしくお願い致します。

(取材:成澤和音)

おおつきよし
昭和27年南陽市生まれ。米沢工業高校を経て、山形大学工学部、東北大学大学院を卒業。同54年、酒田工業高校が初任地、米沢工業高校、教育センター、山形工業高校を勤務した後、平成18年に県立真室川高校、東根工業高校の校長として奉職、同23年4月から現職。