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寄稿 郷土料理は、「日本の薬膳料理」 鈴木寿美子

寄稿者略歴
suzuki-1 鈴木寿美子(すずきすみこ)
 米沢市生まれ。全日本薬膳食医情報協会認定 薬膳アドバイザー。釜山大学校 韓医科学研究所健康文化研究センター主催東医宝鑑アカデミー ティーセラピー専科3期卒業。韓方茶セラピスト。米沢市在住。


郷土料理は、「日本の薬膳料理」 〜 身近な薬膳料理で健康維持 〜

 『薬膳』と聞いてイメージすることは?と尋ねると、「漢方薬の入った、美味しいとは思えないけど、何となく健康に良さそうな中華料理」とか、「身体には良さそうだけど、匂いや味がちょっと」と、大抵の人は答えます。これは、『薬膳』が日本に入って来た時、生薬の入った「健康に良い料理」だけが先行してしまい、本来の薬膳料理が正しく伝わっていなかったからです。
 実は私も、そういった『薬膳』について誤った認識を韓国の東洋医学である『韓医学』の中の『食治』という治療方法の一つである『韓方茶』を学ぶまで持っていました。

mc-1 しかし、『韓方茶』を学んで行くうちに、『薬膳』についての考え方も変わり、より身近なものに感じるようになったのです。私が『薬膳』の道に進むきっかけになった『韓方茶』。元々お茶が好きで、気分に合わせて緑茶や紅茶、烏龍茶等を飲んでいました。これらに共通するのは、お茶の葉を使って飲むお茶です。ところが韓国でよく飲まれているお茶は、緑茶もありますが、伝統茶といわれる果物や野菜の実や花、根や葉等を使った『ゆず茶』や『菊花茶』、『とうもろこし茶』のようなお茶なのです。
(写真上=見た目も健康的で、美味しそうな薬膳料理)

 そんな『韓方茶』を釜山大学の韓方医から学べる講座が日本であると知り、自分でも作ってみたいという思いや、韓国の『チャングムの誓い』や『東医宝鑑』という韓医学書を作った『ホジュン』等のドラマを見ていたこともあり、東洋医学に対する好奇心から学び始めました。
 東洋医学は、元々中国が発祥で、アジア全域に広がった医術。最近では中医学と呼ばれることもありますが、日本では『漢方』として知られています。韓国では『韓医学』として発展し、その中の『食治』は、お茶や薬膳料理として、生活の中に溶け込んでいます。
 食治は、「食べて病を治す」と捉えがちですが、「病は気から」というように、「食べて気を養う」ことを意味します。この食治の方法として、食物の性質を調べて体調に合わせて取り入れること、東洋医学の理論により生薬を加えて作った料理等が挙げられます。
 後者は、正に私達が知る薬膳料理ですが、体調に合った効能がある食物を摂取することも薬膳なのです。このことは、『薬食同源』という、「薬物も食物も同じ自然の産物であり、薬と同様に各々特別な効能を持っている。薬物も食物もその源は一つである」という思想にも当てはまります。
 韓方茶には、高麗人参等の生薬を用いるお茶もあれば、先に紹介した『菊花茶』等があります。例えば、この菊花茶は、頭痛やほてりのある熱を下げたい時に飲む傾向があります。菊の食性や効能を陰陽道(陽は、日中、明、暖等、陰は、夜、暗、寒。等)や、五行(四(五)季、五味等)で調べると、秋の食物で、寒涼性の性質を持つ甘苦い味、肺を潤す等が挙げられます。確かに秋に収穫し私達も食します。
 実はこの菊花茶のような韓方茶と同じように、植物や食物を材料としたものが日本にもあるのです。「明日葉茶」や「黒豆茶」、「ごぼう茶」等です。これらのお茶も体調に合わせて飲んでいませんか?日本でも、薬膳茶を飲む習慣が残っている証拠です。
 このように、薬膳の要素を含むお茶を調べていくと、馴染みのある食材が多々出てきます。その中に、「ひょう(スベリヒユ)」があるのに私は大変驚きました。何故なら「ひょう」は、日本でも山形県でしか食べられていないからです。それを韓国では春のナムルとして、中国では、野菜炒めとして食べられるポピュラーな食材で、薬膳でも取り上げられる食材だったのです。そのことに私は衝撃を受け、益々薬膳に興味を持ち始めました。
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 先日、米沢の方が、米国ロスアンゼルスに行った際に、この「ひょう(スベリヒユ)」がマーケットで売られているのを知ってびっくりしたと友人から聞きました。ギリシャ料理にも「ひょう(スベリヒユ)」を使ったレシピがあるようなのです。ですから、以前テレビで話題になった、「山形県人は雑草を食べている」というのは、大変な誤解であり、世界の人たちに愛されて食されている高級食材を私達山形県民が先陣を切って食べてきたと言えるのではないでしょうか。
(写真上=薬膳料理の材料となる乾燥野菜)

 さて、薬膳には、『身土不二』という言葉があります。これは、「人の身体と土地とは切り離せない関係があり、その季節に取れたものを食べて自然の摂理に逆らうことなく生活することが身体に良い」という考えです。
 菊にしても、ひょう(スベリヒユ)にしても、その季節にお浸しや吸い物、煮物にして食べています。
 私達が身近に食しているこの「郷土料理」は、「身土不二」の理論に沿った日本のその土地に住む人に合った食材でつくられた薬膳料理とも言えます。そして、私達は誤った薬膳の知識で「郷土料理=日本の薬膳料理」だったとは知らずに食していたことになります。この、先人が築いた郷土料理を、最近、食する機会が減っているような気がします。郷土料理という貴重な財産と身土不二の思想を忘れることなく生活の中に取り入れ、次世代に繋いでいかなくてはならないと思います。
 また、現代は活動する時間が長かったり(陽)、食生活も偏っており、陰陽のバランスが崩れ、ストレスを抱える人も多くいます。また、ストレスにより気の巡りが悪くなり病を引き起こす原因が沢山あります。未病(西洋医学的数値に問題はないが、体調が悪い状態)から疾病に至らせないためにも今後は正しい薬膳について、また身体に合った「韓方茶」や「養生食」を紹介し、皆様の健康に役立てていきたいと思います。

(2019年6月26日10:50配信)