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「心の琴線に触れるものづくり」
今野 千保
定年退職するまで勤務したソニー(株)時代、私はいろいろな方々と出会い、経験し、そしてご指導頂いたことが今になってとても有難く思っています。昭和21年創業のソニーは、かつては画期的な商品を次々と生み出して、「ソニーブランド」を世界に発信してきた企業です。その原動力は何かと言えば、とても個性的で強力なリーダーシップを持ち、且つ顧客を大切にするトップを擁していたことにあると言えます。創業者の井深大氏と盛田昭夫氏ら、そしてその後に社長となられた大賀典雄氏などです。大賀社長時代に、オランダのフィリップス社と協力して、世界に先駆けてCDを発表したことで知られますが、商品企画マンとしての心構えも教えてくれました。
昭和60年頃、私は8ミリカムコーダーの商品企画を担当していました。当時の事業本部長が、私のような若手の商品企画マンと大賀社長(当時)との意見交換会をセットしてくれたのです。私が大賀社長に「8ミリカムコーダーの商品企画を担当しています」と話すと、銀塩カメラ時代のカメラ専門雑誌を私に差し出し、「こういう雑誌、読んでる?」と聞きました。私が無いと答えると、「そもそもの所(カメラユーザーが大切にするカメラの原点)をちゃんと見ておかないとね」と言われました。また、別の機会には、8ミリカムコーダーの電源ボタンの「クリック感」がない、と駄目出しされました。
この様に、使う側の視点に立った、心の琴線に触れるものづくりの教えは今も私のバイブルです。(こんのちほ@山形大学国際事業化研究センター長、同大学院理工学研究科教授)
平成26年5月3日米沢日報掲載
平成27年1月30日14:45配信