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「私の心の中に生き続ける恩師」
鬼武 一夫
昭和36年4月、私は金沢大学に入学したが、恩師の一人に植物分類学者として著名な里見信生先生がいらっしゃった。大学3年生の植物分類学の講義で、「踏み分ける麓の道は多けれど、同じ高嶺の月を見るかな」という歌(道歌)を黒板に書かれて、「目標は同じでもたどり着く方法はいろいろある。君たちに相応しい方法を見つけなさい」と諭された。私の人生の指針となり大切にしている歌となった。
昭和61年4月、私は山形大学教員として赴任することになり、里見先生に挨拶に訪れた。その時に初めて先生から、「実はね、山形県東根市に東根城址があるけど、僕はその末裔で世が世ならそこの城主だったんだよ。一度行って見るといいよ」とお聞きした。調べてみたら、確かに里見先生は東根を治めた里見氏(治世1584?〜1622)の直系だった。それまで里見先生のルーツをお聞きしたことがなかったからとてもびっくりした。
先生の業績の一つに、国内にある欅(けやき)の番付一覧作成がある。東の横綱は東根小学校(元東根城跡)にある国指定特別天然記念物の大欅だが里見氏の歴史と欅の番付一覧作成がそこで全て結びついた。里見先生の退官記念の特別講義は落語だった。高座を作って座布団を敷いて、皆を大笑いさせて大学を去られた。里見先生は鬼籍に入られたが、私の心の中にいつまでも生き続ける恩師である。(おにたけかずお@学校法人富澤学園 東北文教大学・東北文教大学短期大学部学長)
平成26年5月18日米沢日報掲載
平成27年1月30日14:45配信