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歌 手  大泉逸郎氏


 平成6年に発売した「孫」が240万枚を売る大ヒットに輝き、山形県を代表する歌手として活躍している大泉逸郎氏に取材した。

ーー先ほどは、今年、ご病気をされたとは思えないしっとりとした歌いぶりでした。

大泉氏 (脳梗塞の後遺症により)言語は大丈夫だったのですが、平行バランスが少し崩れました。ゆらゆらして真っすぐに歩けませんし、それに体力がありませんね。半年から1年は(治癒に)かかるだろうと思います。

 病気をして、やはり命というのは大事にしなければならないと思いました。命は生きている証であり、(人の)原点です。

ーーキモノ姿がトレードマークの大泉さんですが、今日は背広姿で歌うのを初めて拝見しました。

大泉氏 (病気をして)痩せましたので、サラシを巻いても腹が出ないのでキモノでは格好がつかないのです。とても困っています。いま、キモノの寸法を全部調整しているところです。

ーー大泉さんのヒット曲「孫」では、山形県を全国に発信して下さいました。県民の誇りです。

大泉氏 その孫も高校2年になりました。「孫」の歌ではお爺ちゃんを立てました。「爺ちゃん、あんたにそっくりだよ」ってね。今後はお婆ちゃんを立てて、7月20日に新曲「おばあさん」をリリースします。

 「お年寄りがこれまで頑張って培ってきたから、若い者は安心して暮らせるのだよ」ということを訴えたいですね。今の若い者の中には、自分一人で大きくなったように喋っている者もいますが、それは違うということを言いたいですね。来年は私の古希の節目の年ですから、思い切ってこの歌を全国にアピールしながら頑張っていきたいと思っています。

ーー今まで歌ってきて良かったと思うことは何ですか。

大泉氏 ほとんど、私の実体験を歌にしてきました。自分で作曲していますから、どこに行っても「そうだよ、その通りだよ」と(観客の皆さんと)意思疎通が図れるのです。(私の歌で)お年寄りの方々には自信を持ってもらいたいと思います。(高齢者について)今、いろいろな見方がなされていますが、この人たちがいたから若者は頑張れるのだと思います。

ーー歌謡曲を歌っている後輩の方々にはどのようなアドバイスをされていますか。

大泉氏 リズムとか音程で上手な人は一杯いるのですよ。ただ、心の歌というのか、詞を歌ってドラマにしていくという人がなかなか少ない。「孫」もそうですが、どんな歌にもドラマがあるわけです。声の強さ、弱さ、そしてこぶしとか、(歌には)いろいろ要素があります。その心の様を細工しながら歌えば、どんな歌でも「孫」以上に良い歌になるのではないかと思います。皆に聞かせようと、ばんばん走る人がいっぱい居るのですが、逆にしっとりと聞かせる部分があってもいいのではないかなという気がします。

ーーご病気を乗り越えられて、今後はどんな人生を生きたいですか。

大泉氏 私はこれまで民謡から始めてずっと歌で走ってきた人生ですから、声の出る限り家族の歌、自分の背丈にあった歌を歌い続けていきたいですね。実体験に基づく歌はそんなに頑張らなくてもいいのです。自分の気持ちや雰囲気をそのまま訴えればいいわけですから。そのような方向の歌詞を大事にして歌を創り上げていきたいと思います。歌で始まって歌で終わるというのが私の(人生の)モットーです。それには健康が何よりです。今日(高橋信行さんの祝賀会に)来て、歌わせて頂き、自分の体にとってもいい薬になりました。



おおいずみ いつろう
 昭和17年、山形県西村山郡河北町生まれ。さくらんぼ農家の傍ら、昭和52年、東北・北海道民謡大賞受賞。平成6年、初孫が誕生で自ら作曲した「孫」が大ヒットし、NHK紅白歌合戦に出場。平成23年、脳梗塞で入院。平成23年7月20日、「おばあちゃん」を発売。