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山形大学 国際事業化研究センター センター長

     大学院理工学研究科 教授 今野千保氏


konnochiho
「人や技術・ノウハウという地域資源を強化して、地域や企業の持続的成長を目指す」

 平成26年4月1日より山形大学国際事業化研究センター長に就任した今野千保氏に、センター長としての抱負や同センターの取り組み内容などについて聞いた。

――今野教授は民間企業在籍中、どのような仕事をされてきましたか。

今野氏 山形大学に赴任する前は、ソニー(株)で8ミリビデオやVHSデッキ等のコンスーマー向け商品企画、リチウムイオンバッテリーの開発企画・事業企画を経て、最後の10年間はR&D組織でデバイスの開発企画を担当しました。そこでは開発の成果を社内の事業部や社外に紹介し、実際の商品化に結び付けるという橋渡しの業務も含まれていました。
 事業部やR&D組織の両方に在籍しておりましたので、それぞれの立場や気持ちが分かり、密にコミュニケーションしながら戦略立案から実用化という出口に向かって誘導するプロセスは、現在、山形大学国際事業化研究センターでやらせて頂いているプロセスと非常に似ております。これまでの経験は今後、いろいろな側面で活用できると思います。

――センター長としての抱負やビジョンをどう描いていますか。

今野氏 2年前、私が着任した時に明文化したミッション(存在意義)は、山形大学の研究者が生み出す新たな「知」を社会に継続的に還元していくことです。当センターには私のような企業出身者や金融機関からの出向者がいますので、多様な経験を持つ組織として強みがあると認識しています。
 当センターのビジョン(将来の姿)は「新産業の創成」と「既存産業の価値向上」を最終目標として掲げ、地域産業と大学を結びつける4つの活動に取り組んでいます。第1に「学内の魅力的な研究シーズ(種)の発掘・育成」、第2に「多様化する時代の人財育成」、第3に「地域産業のイノベーション支援」、第4に、山形県が現在、そして将来的に抱えるであろう社会的課題を解決するような研究シーズを「産学官金が一体となって実用化するスキーム(仕組み)の構築」です。

――「既存産業の価値向上」という面では、国際事業化研究センターが取り組んだ「ものづくり産業シニア人材活用事業」(平成25年度県委託事業)での「ものづくりシニアインストラクター事業」が大きな実績をあげていますね。

今野氏 「ものづくりシニアインストラクター事業」は地域資源ともいえる、ものづくり民間企業OBにシニアインストラクター養成スクールにて山形大学メソッドを学んで頂き、終了された方々を企業に派遣して、経営革新、生産革新のお手伝いをするシステムです。「ものづくりを科学する」という目的での地道な活動ですが、中小企業の経営トップへの問診から始めて、情報とモノの流れの「見える化」による現場診断を行い、診断に基づき処方箋を作成するという丁寧な進め方が、対象企業の収益改善という成果に結びついているのだと思います。

――今後、シニアインストラクターはどれくらい養成していくのですか。

今野氏 現在、養成スクール修了者は49人います。昨年度は山形県からの委託事業の一環で県内ニーズ調査も行いました。県内には想定対象企業が約4000社あります。実際にシニアインストラクターの指導を受けたいと希望する割合と実際に活動するシニアインストラクターの割合を設定して逆算すると、現在の3倍の150人程度は養成したいところです。

――シニアインストラクターはどのように活用できるのですか。

今野氏 自治体や金融機関からのご紹介などもありますが、先ずは、当国際事業化研究センターに直接ご相談いただければと思います。

――中小企業がグローバル時代に競争し、戦っていくためには、人、技術、資本などの面で大きなハンディがあります。

今野氏 山形県の製造付加価値額は、平成24年度は対前年比マイナス10.2%(平成25年9月山形県工業統計調査結果報告書より)と減少傾向が明らかですが、中小企業の中には「お宝」が沢山あると思います。ただそれらの企業の中には、もの凄い価値があるのにPRしていないとか、自分の持っている強みに気づいていない場合も見受けられます。自他ともに認める強みを武器にして既存事業の横展開が可能です。
 また、今後、更に多様化、変化が予想されるビジネス環境においては、その変化を先取りして、お客様との接点に近いところでお客様の課題や潜在ニーズを探れば、最終的に付加価値向上につながるのではないかと思います。例えば、自社が保有する強みを元に他社と連携してシステムビジネスやソリューションビジネスなどに発展させることも可能です。
 新しいことを始めるために必要な人材の育成や知識習得などは山形大学がご支援出来ます。私ども国際事業化研究センターとしても、地域産業と大学を結びつける種々の活動を通して、一歩ずつ山形県の成長戦略に貢献していきたいと考えます。

2014年5月11日米沢日報掲載
2015年1月24日20:00配信

こんのちほ
 山形県鶴岡市生まれ。県立鶴岡南高校、山形大学教育学部卒、昭和50年、ソニー株式会社入社。コンスーマービデオの商品企画、リチウムイオンバッテリーの開発企画・事業企画部統括、デバイス開発本部開発企画部統括などを歴任。平成24年、山形大学国際事業化研究センター副センター長。同26年4月1日より現職。