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第62回米沢市民芸術祭参加、第34回米沢男声合唱団定期演奏会が、9月6日(日)、米沢市市民文化会館で行われた。常任指揮者は永井学氏、ピアニストは小野弘子氏。団員は白のブレザー、黒のスボンでステージに登場した。
オープニングは、「いざ起て戦人よ」(藤井泰一郎作詞 ジェイムズ・マクグラナハン作曲)。1911年に作曲されたという男声合唱の定番の曲である。オープニングに持ってきて、自らを奮い立たせるが如く、男声による荘厳なハーモニーを聴かせた。
第1ステージは、「想い・祈り」がテーマ。いま世界では、ウクライナ戦争、ガザでの戦闘、イラン戦争と至る所で争いが起きている。まさに、世界中の人々が、亡き人を想い平和を祈る時である。
「フィンランディア」(シベリウス作曲)と「雨後」(多田武彦作曲)の2曲は、ピアノ伴奏なしのアカペラでの演奏。 フィンランドの作曲家シベリウスが作った交響詩「フィンランディア」の主旋律に詩を重ねたもの。オーケストラで奏でる交響詩「フィンランディア」は、フィンランド人の愛国心をかきたてるものとしてとりわけ有名であるが、合唱曲としては筆者は初めて聞いた。北欧の重おもしくも甘美なメロディーと原語での詩が相まって、美しく会場に響き渡った。
「雨後」では、一つ一つの雲が山を離れていく様を歌い上げる。この日の団員は、14名と決して多い人数ではない。またアカペラだから団員一人ひとりの力量がはっきりと現れる。筆者は始め、会場奥に座って聴いていたが、一人ひとりの声がはっきりと聞こえてきた。コーダでは、美しいハーモニーを保ちつつ静かにエンディングした。
「くちなし」(高野喜久雄作詩 高田三郎作曲)は、在りし日の父の思い出を歌った曲。ピアノが囁くように奏でる。テナーがメロディーを歌い、バリトンとバスが通奏低音のような響きで曲を歌い上げた。
永六輔作詞、いずみたく作曲、坂本九の持ち歌「見上げてごらん夜の星を」。この曲を聴くと、御巣鷹山への日航機墜落で亡くなった坂本九とつい重なってしまう。その悲劇的な死を迎えた坂本九が、「夜の星を見上げれば小さな星がささやかな幸せを祈っている」と私たちを励ましてくれているように思う。この曲は確かに心に響く忘れられない名曲である。
第1部の最後は、「戦争を知らない子供たち」。フォーク歌手杉田二郎が作曲、1970年に発表された曲だが、当時はベトナム戦争が激しかった時。当時、筆者はまだ小学校6年生だったが、新聞は毎日のようにベトナム戦争の戦況を報道していた。どうして人間は戦争をするのか、歌を聴きながらそんな疑問を感じながら新聞を読んでいた当時のことを思い出した。
この曲は、前半部はピアノが戦争をイメージさせる不気味な響きを奏で、戦争の悲惨さを表現しているようだ。そして、ピアノの奏でる音は声楽と完全に対立している。しかし、その激しさはやがて段々と明るくなっていき、一緒に歩いていこうと希望の世界に誘っていくように思えた。
第1部の最後で、同合唱団の山口和夫会長が団の紹介や団員募集を爽やかにおこなった。現在、同団員は17名で、2人の新人が加わったそうだ。そして80歳を超えた団員が何人もいると紹介した。5年計画を立てて、団員を増やす努力をおこなっている。
山口会長が設立当初からいる団員2人にインタビューした。一人は六郷町在住の古山泰彦さんで、「六郷小学校在学時に学校を代表して歌ったことがある。好きなことは続けてほしい。」と述べた。もう一人は長岡春雄さんで、「山口会長同様に米沢市政100周年でベートーヴェン第九を歌う会があり、以来、80歳を超えた今も歌い続けている」と話した。2人は、歌うことで健康で長生きできることを証明している。
第2ステージの男声合唱組曲「終わりのない歌」は、銀色夏生作詩、上田真樹作曲の甘く切ない、激しい恋の物語。全4曲からなる。第3曲の「終わりのない歌」では、「ください」という部分が輪唱のように音が重なり合う。そして「時間をください、力をください」と詩は続いていく。団員たちは情感たっぷりに歌い上げていた。
第4曲の「君のそばで会おう」では、「ぼくたちの恋は終わりはしない。終わらせないと僕が決めたから」と、恋の感情の激しさを歌い上げ、ピアノは転がるようにリズムをかえて、段々と曲は高まっていく。聴いていてとても不思議な曲である。
第3ステージは、クラリネットアンサンブル「極楽浄土」がゲスト出演した。最近、合唱団の演奏会で、ピアノ演奏や器楽アンサンブルの出演が増えてきた。合唱だけでなく、そう言ったバラエティーがある演奏会も最近の傾向なのかもしれない。
メンバーは、山形、寒河江、米沢に住むメンバーで、当日は6名が演奏した。楽器は、通常のBbクラリネットのほか、高音がでるEbクラリネット、低音がでるバスクラリネットで、音色が豊かな組み合わせとなっている。クラリネットは、人の声の音域とも近いという。発足以来8年目となり、この5月には米沢市南原コミセンで第5回の演奏会を開催した。「極楽浄土」の名称は、特に宗教とは関係がないそうだ。「極楽浄土で聴いているような音楽を奏でたい」ということ。レパートリーは、バロックから演歌までととても幅広く、地区の文化祭などへの出演依頼もあるという。
演奏した曲目は、反田恭平作曲「花へ。」、小椋佳作曲の「おしょうしな」、そして岩井俊二作曲の「花は咲く」の3曲で、「おしょうしな」は、美空ひばりが歌っている曲が米沢の祭りでよく耳にする。「おしょうしな」とは、米沢弁で「ありがとう」を意味する。米沢をPRする上で貴重な曲だ。「花は咲く」は、ご存知の東日本大震災復興祈念ソング。
最後の合同演奏では、「極楽浄土」の音楽に乗せて、合唱団はモーツァルト作曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を歌った。古今の宗教曲の中で、最高の名曲とされる同曲を米沢男声合唱団は、ゆっくりとしたテンポでしっとりと歌い上げた。
続く「あの素晴らしい愛をもう一度」(北山修作詞 加藤和彦作曲)は、楽しいテンポで指揮者が一緒に歌っている。高音がでるEbクラリネットは、まるでソプラノ歌手のよう。バスクラリネットも良い音を響かせる。華やかさを一挙に出しまくりの、熱をおびた演奏になった。
「ほらね、」は(いとうけいし作詩 まつしたこう作曲)は、東日本大震災に寄り添った曲。「歌は大切なともだち」だと歌う。男声合唱とクラリネットの合奏がお互いを引き立て合い、とても相性が良いと感じた。ピアノ伴奏とは違った世界を表現していた。
アンコールは、「おしょうしな」を男声合唱とクラリネットの合奏が演奏し、聴衆の心に響く演奏を聴かせてくれた。米沢男声合唱団がこれからも継続していけるよう、応援していきたい。(取材 成澤礼夫)
米沢男声合唱団は、毎週火曜日、午後7時30分から西部コミュニティセンターで練習をおこなっている。問合せは、090−2023−9119 小椋さんまで。