hptitle01

4月21日

恩人C・H・ダラスと米沢牛ブランドを語る

 日本の三大和牛と言われる「米沢牛」。今回、(株)米沢食肉公社代表取締役社長尾﨑世一氏の自叙伝『わが人生を顧みて』の出版(米沢日報刊)を記念し、米沢牛の恩人チャールズ・ヘンリー・ダラスと米沢牛をテーマに、生産者、米沢牛レストラン、食肉市場、観光に携わる方々で座談会を行った。(司会は成澤礼夫米沢日報社長)

ーー米沢牛は日本の中で圧倒的な知名度とブランド力を持っています。

小嶋氏 米沢には、上杉謙信公、直江兼続公、上杉鷹山公に代表されるように、上杉の城下町としての歴史がぎっしりと詰まっています。さらに食として米沢牛ブランドがあるというのは、観光面から言ってもとても有り難い話ですね。米沢牛はある意味、米沢全体の最大ブランドです。

 例えば、県外の遠隔地に行って、「米沢から来ました」と言うと、「ああ、あの米沢牛の産地ですね」と言う返事が返って来るくらいに知名度があり、高い評価がなされています。米沢市民の一人として、これほど嬉しいことはありません。市民としての誇りを米沢牛ブランドからも与えてもらっているような気が致します。

ーー米沢牛が一時、山形牛に統合されようとした時期がありました。

尾﨑世一氏 明治4年から同8年まで、米沢にあった興譲館洋学舎に赴任した英国人教師チャールズ・ヘンリー・ダラスが任期を終えて横浜に帰る時に、現在の飯豊町添川産の牛を引いて行き、それを仲間にご馳走したところ大変な美味と好評で、「米沢牛」が知れわたり全国で取引が始まったという歴史があります。米沢牛は単に美味しいというだけでなく、歴史のロマンが溢れています。

 髙橋幸翁前市長が「米沢牛」にこだわって、山形牛との統合をさせなかったというのは、先見の明があったと言わざるを得ません。平成4年に「米沢牛銘柄推進協議会」ができた際には、当時の髙橋市長がその初代会長になっています。この協議会で、米沢牛の定義を明確化したことがその後の米沢牛ブランド構築に大きな役割を果たしました。

ーー平成17年からは同社社長として経営の舵取りを行っています。米沢牛生産者から見て、尾﨑さんのこれまでの働きをどのようにご覧になられていますか。

伊藤氏 尾﨑さんが米沢食肉公社に食肉格付員として赴任されて来たというのは、私達、生産者にとっても大変に心強く、絶大な信頼を置いておりますね。というのも、尾﨑さんは東京食肉市場において、食肉格付協会の事業所長を経験され、その実力を証明するものとしての肩書きが大きかったと思います。

 昭和63年頃から、私達は米沢牛を東京食肉市場に出荷しておりましたが、当時の米沢牛の枝肉は重量が300〜350㎏と全体に肉付きが弱く、厚みに欠けた貧弱なものであった。生産者は東京食肉市場に出掛けては、高値の付く枝肉の肉質や脂質の勉強をし、購買者や食肉市場会社のアドバイスを聞き、高く売れる牛肉作りに必死でした。経験豊富な尾﨑さんが米沢食肉公社に来られて、米沢牛共励会・共進会の際には、肉質についての講評を頂きましたが、大変に勉強をさせて頂きました。

 生産者と購買者は利害が対立する関係ですが、そこを食肉格付員が客観的に、中立な立場で格付して頂ければ、どちらも文句の付けようがないわけです。

尾﨑世一氏 私が米沢食肉公社に食肉格付員として招聘を受けたことは大変に有り難い話でした。米沢に生を受け、実家からは高等教育を受けさせてもらったという恩があります。いつかは故郷に役立ちたいと考えていましたが、このような形で実現できるならば、男冥利に尽きると言えます。家族も賛成してくれました。

 大学卒業後、9年間の家業、日本食肉格付協会での27年間に続いて、まさに60歳からの第三の人生をスタートさせたわけです。ちょうど「米沢牛」が定義されて4年が過ぎておりました。まさに米沢牛ブランドを全国発信する大事な時期にあたり仕事には緊張感をもって臨みました。

ーー平成13年には、日本でもBSEが発生して消費者の不安が高まり、米沢牛も厳しい局面を迎えました。

伊藤氏 日本でBSE問題が発生した際には、生産者、販売者を含め、一時は大変な状況を経験致しました。

 しかし、「災い転じて福となす」という言葉がありますが、米沢牛に関しては、行政、生産者、購買者、そして米沢食肉公社が一体となって、全国で一番最初に全頭検査の上、安心宣言を行いました。農林水産副大臣として、BSE対策を指揮していた遠藤武彦代議士のお膝元ということも幸いしたと思います。

 皆で安全宣言のハンコを押して消費者にPRを行いましたが、対策や対応が早かったことから市場での米沢牛の評価が急激に高まりました。米国産の牛肉も一時ストップするという事態になり、逆に国内産は安全、安心であるという消費者の心を掴みました。それは現在までも消費者の心の中に浸透していると思います。

続きを読む>>