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第26回ひろすけ童話賞 石井睦美著『わたしちゃん』


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      石井睦美さん
  (写真提供 浜田広介記念館)

 ひろすけ童話賞委員会(委員長 寒河江信高畠町長)は、10月1日、第26回ひろすけ童話賞を発表しました。受賞したのは、石井睦美さんで、作品名は『わたしちゃん』(出版社:小峰書店)です。
 『わたしちゃん』のあらすじは、パパの仕事の都合で夏休みに海のない町へ引っ越した「まり」は、大好きな海や友だちと離れてしまいました。新しい町にはまだ友だちがいないので、夏休みなのに誰とも遊べません。公園に行く途中、誰もいない道で声をかけられます。生け垣から現れた女の子に庭で遊ぼうと誘われます。はじめて遊んだのに、ずっと前から知っている友だちみた い…。帰り際、名前を尋ねると女の子は「わたし」と答えます。「わたしちゃん、またあしたね」と別れます。ところが翌日家を訪ねると、家から出てきたおばあさんに「うちにはこどもがいない」といわれてしまいます。まりには、おばあさんがうそをいっていないこともわかりました。夏休みの間、何度も家の前まで行きますが、わたしちゃんに会うことはありませんでした。まりは、海へ行くたび、「わたしちゃん、海に行ったかな」と思うのでした。

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『わたしちゃん』小峰書店

 ひろすけ童話賞選考委員会の矢部美智代委員長は、最終候補に残った5作品の選考経過の中で、『わたしちゃん』について、選考委員が率直に述べ合い、交された感想として、「文体が美しい。1行1行、気を抜かないで書かれている」「特にひとりっ子の少女には、空想の世界に遊ぶ時代がある。そこがとても良く描かれ、寂しさが伝わってくる」「後半、わたしちゃんの出現以降に、少し物足りなさが残る」「女の子が、自分の世界に入り込む年代が、よく描かれている」などをあげました。
 挙手による表決の結果、満票になったのは『わたしちゃん』の1作のみで、「少女の心をよく理解した、雰囲気のある作品」だとして、選考委員全員の賛同により決定となったことを述べています。
 石井睦美さんは、1957年、神奈川県生まれの今年58歳。フェリス女学院大学卒。出版社勤務の後、前川康男氏に師事し、創作を始めました。『五月のはじめ、日曜日の朝』で毎日新聞小さな童話大賞と新美南吉児童文学賞、『皿と紙ひこうき』で日本児童文学者協会賞、翻訳を手掛けた『ジャックのあたらしいヨット』で産経児童出版文化賞大賞を、また小説『パスカルの恋』で朝日新人文学賞を受賞。2005年から2012年まで雑誌「飛ぶ教室」の編集人を務めました。
 石井さんは、「わたしの創作活動は、ある夜に見た夢から始まりました。書き記すと、原稿用紙五枚の物語みたいなものができました。その日から、童話を書きはじめました。幼年の童話を書くことは、なによりも難しいことでした。それは、幼年の目で世界を見、幼年のこころで世界を感じ、そしてそれを表現することが難しいからです。楽しくて、難しい。幼年童話『わたしちゃん』で、この素晴らしい賞をいただけたことをこころから感謝し、精進を重ねたいと思います。」と受賞のことばを述べています。
 第26回ひろすけ童話賞贈呈式は、平成27年11月5日(木)午後2時から、高畠町の浜田広介記念館で行われます。受賞者には、正賞として、賞状・「一筋の道」レリーフ、副賞として、賞金50万円・地産品が贈呈されます。

(2015年10月2日9:30配信、10月4日13:40最終版配信)