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山形県でも増加する犬猫多頭飼育問題を考える研修会


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 飼い主の高齢化や地域での孤立などの理由から山形県内でも犬猫の多頭飼育が増加傾向にあり、動物愛護団体、社会福祉協議会、市町村担当者らを対象に、令和元年度動物愛護推進研修会が、2月14日、山形県総合研修センターで開催された。主催したのは山形県防災くらし安心部 食品安全衛生課で、当日は岩手県や秋田県など県外からの参加者も含め、約130名が出席した。はじめに、同食品安全衛生課の須藤正英課長が「多頭飼育の問題は、高齢化社会という時代背景があり行政だけでは解決できない。地域を含めて多頭飼育の問題に対応していきたい」と挨拶した。

animal-2 続いて、山形市社会福祉協議会生活サポート相談窓口の児玉和行氏が「ペットの多頭飼育崩壊〜生活困窮者支援の取り組みから〜」と題して事例報告を行った。(写真左=児玉和行氏)
 児玉氏は、生活困窮の相談で面談した市営住宅に住むAさん(78歳)と何度か面談するうち尿臭に気づいた。またAさんが猫を飼っているようだと市役所に苦情が入っていたことから、同意を得て本人宅を訪問すると、猫が適切に飼育されておらず、衛生環境が悪い状態を確認、また家賃の長期滞納、他県に住む娘とは関係が良くなく孤立している状況を把握した。ただ猫の取り扱いに関しては、福祉関係の部署にあたっても「自分の仕事ではない」と言われた。そこで「やるだけやってみよう」と、猫の捕獲、ナンバリング、性別、特徴を把握、写真撮影を行った上で保健所と連携した結果、保護ゲージの貸し出し、雄雌判別の支援、捕獲や怪我をした際の助言、県動物愛護推進員との連携などが可能となり、手術費用の一部立替、フードの提供、飼育方法のアドバイス、健康チェック、獣医師への受診、服薬投与支援、譲渡会の開催などの支援を受けた。
 また里親探しのチラシを保健所やスーパーに掲示したり、社会福祉協議会のブログやフェイスブックにアップした結果、10匹全ての里親を見つけることができ、Aさんも「みんなが猫や自分の生活のことを心配してくれてありがたい」と心を開き始めたという。児玉氏は「担当者や地域での気づきが一番大切」とし、きちんと情報を把握し多機関と連携することで負担も減り、より良い支援につながると述べた。

animal-3  続く特別講演では、現在、環境省社会福祉施策と連携した多頭飼育施策に関する検討会委員を務める成城大学法学部教授の打越綾子氏が「多頭飼育問題に関わる論点整理」をテーマに講演を行った。
(写真右=講演する打越綾子氏)

 打越氏は、まず多頭飼育問題の定義が難しいことを述べ、飼い主がブリーダー業者の場合は、動物取扱業者への指導や監督を徹底するべき課題であり、一般的な飼い主や保護活動家の場合は、保護感情+判断能力の欠落+経済的な能力欠如があり、精神性疾患や人間社会での孤立による動物依存があり、善意のはずがネグレクト飼育と周囲の迷惑という社会問題につながる可能性を指摘した。また定義では、一世帯あたりの飼育頭数や動物の大きさ、飼い主一人あたりや居住スペースあたりの飼育頭数など考慮すべき要素があるとした。
 さらに「危険な多頭飼育者」を定義する明確な基準がなく数値基準だけでは定義を決めるのが難しいと述べた。多頭飼育問題への対応の難しさは、飼い主が第一義的な責任者であるが、周辺の生活環境の保全は公衆衛生行政、動物福祉・救護は動物愛護管理行政、飼い主の生活支援・行動様式の改善は福祉行政、社会的な脅威・危険性の除去は警察行政のように、何が問題であると考えるかで担当する部門が異なること。 全国110自治体で実施している対応内容では、最も多いのが動物愛護の普及啓発107自治体、不適切飼育者に対する指導・説得・監視98自治体、職員同士の日常的情報収集と情報共有86自治体、などが調査から判明した。ただ、自治体側も対応経験が多くはなく、事案ごとに知恵を絞って対応策を関係者とともに考える思考力が必要な現状であると述べた。
 環境省懇談会が多頭飼育の予防対策としているのは、クレームが来る前に多頭飼育の情報把握、譲渡団体や保護活動家を多頭飼育させない工夫、近所から犬猫を譲り受ける方への普及啓発、多頭飼育の届出制度(条例等)を示し、その解決策としては、不妊去勢手術の実施、飼い主の説得、動物のレスキュー団体の見極めをあげた。
 最後に、多頭飼育者に関しては、具体的に事案を検討してケースバイケースで対応策を考えることや、飼い主の生活改善、動物の救護、周辺環境の保全の3点セットを常に意識し、公衆衛生、保健、福祉に関わる行政担当と民間団体が連携し、国民全体が当事者意識で世論を作っていく必要性があると結んだ。

(2020年2月16日14:05配信)