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令和5年11月に、急性期診療を米沢市立病院、慢性期診療を民間の三友堂病院で行うという機能分担で両病院が隣接して新規開業し、全国的に注目を浴びた。国の方向性でもある急性期と慢性期の機能分担での病院経営は、果たして上手くいくのか、敷居石とも見られていた急性期を担う米沢市立病院。開業から3年弱、経営上の課題が浮き彫りとなった。
(写真右=米沢市立病院)
令和7年度米沢市立病院事業会計決算において、地方財政法による「資金不足額」が10%を超える見込みとなり、令和8年以降の起債手続きが、これまでの知事への「協議制」から「許可制」に移行し、資金不足等解消計画を策定し、知事の許可が必要となる事態となった。
地方財政法による資金不足額とは、資金の不足額を事業規模で割り、それに100を掛けたもので、同病院の資金不足額は令和7年度は15%弱(令和6年度は2.4%)の見込みとなっている。
令和8年度の同病院事業会計予算は、収入として、病院事業収益を98億9,345万円を見込み、支出として、病院事業費用を106億2,209万円、医業運転資金に充てるため、企業債を4,600万円借り入れる予定だった。
8月18日、米沢市役所で市長臨時記者会見が行われ、近藤洋介・米沢市長と酒井雅彦・同病院事業管理者が資金不足額が10%を超える見込みとなった原因や今後の対応について説明した。
(写真左=近藤洋介市長〈右〉と酒井雅彦米沢市立病院事業管理者)
近藤市長は、「同病院が資金不足に陥ったのは昭和33年の創設以来初めて。経営再建団体には至っていないが黄色信号である。新病院の開院以来、わずか2年余りで(このような事態となったことに)市長として重く受け止めている。(現状は)建設時の計画水準を下回り続けている」とした。さらに米沢市は同病院に対して、令和7年度に12億8,000万円の資金を米沢市一般会計より繰入したと述べた。(繰入金額:令和5年度12億5千万円、同6年度13億8千万円、8年度予算15億1,373万円:近藤市長が述べた数字と記者会見後に米沢市より出された下表の繰出金とは、若干の差がある)
(写真左=米沢市立病院の経営に関する3か年の比率等)
さらに近藤市長は、このような事態を想定して、令和8年4月に前山形県健康福祉部長の酒井雅彦氏(60歳)氏を病院管理者に迎え入れ、病院事務局長に前米沢市総務部長の神保朋之氏を配置する等、病院事務局を大幅に刷新したことや、NPOのコンサルタントと契約しプランの策定や現場の改善などに着手したとした。また経営改善のためのタスクフォースを実施していると説明した。
近藤市長は、「米沢市立病院のミッション(使命)は、24時間365日の救急受入で、この責任を果たすことだがこれがまだ成っていない」と現状に課題があることを明らかにし、「病院内で意思統一を図っていく」と述べた。そして経営健全化団体となる「資金不足額が20%を超える事態は何とか避けなければならない」として令和8年度の補正予算の中で、米沢市一般会計から病院への資金の繰入を行う予定であることを説明した。
酒井病院管理者は、建設当時の経営計画の見通しが不十分だったとし、資金不足額が15%となった主な要因として、次の大きく3点をあげた。
(1)患者数は、救急や手術を市立病院に集約したが、急性期患者の伸びが想定より低調だったこと(令和7年では入院患者は5%程度少ない:計画88,662人 実際:83,933人)や、維持透析や人間ドッグの機能を三友堂病院に移転したことで、市立病院の外来収益・その他の医業収益が減少、また他病院や高齢者施設など救急隊との連携が不十分だった。
(2)特に、診療材料等の価格が著しく高騰したことや、人件費が人事院勧告に従い想定以上に上昇した。
(3)新病院開院に伴う医療機器の保守・診療材料の購入に伴う経費が増加したことや、アメニティーなどの共用施設の賃借料等のランニング経費が増加した。
今後の経営改善に向けた取り組みとして、近藤市長は、「24時間365日の救急受入れの徹底を図り、市民に寄り添い地域のニーズに応える病院を目指す」としたほか、「医療の質を維持し、雇用を守りながら経営改善に取り組む」と述べた。
これまでの対応で、急性期を専門とした病院であるのに、救急搬送前に受入れ不可と判断した例があったという。また雇用を守りながら経費削減に取り組む内容としては、人員の更なる効率的配置、採用人員の適正化を図ることや、委託の仕様見直し、廃止、DX化を推進し業務効率、診療材料の規格や運用方法、室料等の見直しを行うとしている。
令和8年度の経営状況は、同7年度に増して厳しくなり、健全化法による資金不足額は、令和9年度以降に20%を超える可能性がある。病院単独の努力では、この状況を解消することが難しいため、今後も地域中核病院として、必要とされる医療提供体制を維持できるよう、米沢市の財政当局とも連携しながら経営改善に取り組むとした。
令和8年度の起債発行に向けてのスケジュールは、7月から11月に県の助言の下で資金不足など解消計画案を作成、12月に起債計画書と併せて資金不足等解消計画書を県に提出し、令和8年1月から2月、市議会への報告と説明、3月に知事が起債許可を出すといった予定で進める。
記者との質疑では、「雇用を守りながら経営改善に取り組むとあるが、リストラなどは行わないのか」との質問に、近藤市長は「雇用は守る」とした。またこれまでの収益源だった「維持透析や人間ドッグ」などが三友堂病院に移ったが、三友堂病院との機能分担(急性期は市立病院、慢性期は三友堂病院)などの見直しは行わないのかとの質問には、「現状の機能分担は維持する、(共同での資材調達など)連携を強化しようと動いている」と述べた。
酒井病院事業管理者は、三友堂病院の経営状況は、市立病院側としては情報は持っていないと述べた。近藤市長は、現状の資金不足の問題は「3年程度で解消したい」と強い決意を表明した。
当日は記者会見に先立って、米沢市議会民生常任委員会協議会で、この件に関しての報告がなされた。
(写真右=8月18日に行われた米沢市議会民生常任委員会協議会)
その中で、不足している金額は、凡そ約10億円であることが明らかとなった。また民間では、人件費も聖域ではないと議員から指摘されると、病院側からは、「雇用を守ることと経費削減に全力を注ぐ。人件費に手をつけるのは最後の最後」という回答がなされた。
また市立病院の現状を聞かれた酒井病院事業管理者は、「人口減少が進んでいることや40代から50代が急激に減っている。病院単独での解決は難しい。病院職員の一人一人の意識改革が大切で、一丸になって取り組んでいきたい」との見解が出された。
また病院内のアメニティーについては、年間のランニングコストが3,000万円位であるとした。資金不足額という定義は、「流動負債+企業債−流動資産」という。
更に議員からの「市立病院の値上げ(例えば、無痛分娩費用)のタイミングが遅いのではないか」という指摘には、「他の病院の後になっている」ことを認めた。
棚卸し、数字的な分析はどうなっているかに関しての質問には、酒井病院事業管理者は、「4月に着任して実態が分からなかった。元々の数字のどれが正しいのか簡単には出てこない。」と述べた。「(手術など)半年待ちという実態があるが、(それを解決すれば)医療収入につながるのではないか」などの質問が出された。
8月21日に行われた市政協議会においては、米沢市立病院総務課長より本件に関しての説明がなされたが、議員からの質問などは出なかった。
※令和8年8月21日に開催された市政協議会において、米沢市立病院事務局長より記者会見や委員会などで使用した「資金不足比率」は、「資金不足額」が正しい用語として訂正があったことから本文を修正した。