平成29年2月、東京都から米沢市に移住したピアニスト福田直樹さんは、オリジナルピアノ曲集「『おはなし』 24 Preludes for piano solo(※編集部訳:ピアノ独奏のための24の前奏曲)」を令和3年5月に発表します。
福田さんがこのピアノ曲集の作曲を思いついたきっかけは、令和2年1月、日本でも新型コロナウイルス感染症が確認され、演奏会などのイベントが中止となり、感染の終息までには時間がかかるだろうという思いから、「音楽を通じて多くの人に心の安らぎを届けたい」と、同年8月以降作曲に取り掛かったものです。
ピアノ曲集は全部で24曲から構成されており、今回新たに作曲したものの他に、平成23年の東日本大震災で津波により被害を受けた釜石市を訪問したことがきっかけで作曲した『虹の釜石』ほか、すでに作曲済みのものも数曲加えました。
ピアノの鍵盤は1オクターブが12音からなり、12の音で長調と短調のすべての調を書いていくと24となります。バッハの平均律クラヴィア曲集やショパンの前奏曲にも24曲からなる曲集がありますが、日本人作曲家の作品としては珍しい構成になります。さらにこの曲集の中には、『吾妻の白猿』、『敬師の里』、『草木塔』など、「米澤八景」とサブタイトルを付けた米沢関連のものが8曲、ほかに『羽黒五重塔』など、山形に関連したものが5曲あります。曲調は、ヨーロッパ調のものや、日本調のものなどいろいろで、福田さんは演奏者にも聴衆にも楽しんでもらえるのではないかと話しています。
福田さんは作品が出来上がってから、自分の曲という立場を離れて、演奏家目線で自分の曲に向きあってきました。自ら、「及第点になる作品」と自信のほどを覗かせています。楽譜の出版にあたっては、福田さん自身の演奏で録音したCDを添付して5月以降、頒布する予定です。
福田さんは、4月8日、9日と、米沢市にある置賜文化ホール(伝国の杜)で録音を行いました。朝9時に会場に入り、ピアノと録音機材のセッティング、調律、本番前のテストなど、万全の態勢で臨みました。会場に備え付けのスタンウェイのピアノは、上部と前部の蓋が全て取り払われ、ピアノの弦が外に剥き出しになった分、倍音と呼ばれる微妙なニュアンスの音まで聴こえてきました。
5月2日には、東京銀座にある王子ホールで、曲集の中から一部の初演を行う予定です。ピアノを通して、山形や米沢という風景が聴衆の心の中にすーっと入っていくような、とても美しいメロディーが奏でられることでしょう。「米沢IJU大使」という肩書きを持つ福田さんの本領が遺憾なく発揮されることになりそうです。
福田さんは、これまで色々な作品に触れてきて感じることは、作品の良し悪しというよりも演奏家が弾きたいと思うから後世に残っているといいます。音楽家福田直樹さんが米沢に住んで感じた心象風景が見事に表現された作品であり、多くの演奏家や聴衆に愛される作品になるものと思います。楽譜は、OTO NO CYOUKOKU SHAより5月に出版されます。