今年が没後100年となる画人池田月潭(げったん)の作品を紹介する「野に生きた絵師 池田月潭没後100年展」が長井市十日町にある文教の杜ながいで、9月26日から開催されています。
池田月潭(本名 龍治)は明治14年、元庄内藩士の子として東京神田に生まれ、明治28年、村田丹陵に師事しました。明治36年11月、「能楽羽衣図」が日本美術協会主催美術展覧会で褒賞三等を受け、この頃から桐生、長野、鶴岡など各地で画会を開く活動を始めました。
月潭の弟が長井町(現長井市)に住んだことから、大正3年から亡くなる大正12年までのほとんどを長井町に住み、長井、宮内、米沢、山形などで画会を開催しました。この間、大正8年には、「養老勅使之図」が第五回全国絵画展覧会(大阪関西院主催)で一等賞金牌、大正10年には、「人物画」が日本研美会主催全国絵画実力調査会で名誉一等金賞牌を受けました。しかし、大正12年9月に発生した関東大震災で負傷し弟宅の長井町で療養しましたが、同年11月に享年42歳で死去しました。
池田月潭没後100年展では、長井市の収蔵品のほか、市内外から借用した軸装、扁額、小襖、冊子、屏風、衝立など56点が、メイン会場の小桜館と旧丸大扇屋に分けて展示しています。小桜館では、蘇我兄弟仇討の図、那須与一など、軸装のもの12点が整然と展示され、赤穂義士が描かれた六曲一双のものが数点あり、迫力ある構成で描かれているのも見どころです。旧丸大扇屋の方では、座敷床の間や欄間に作品が展示され、ゆったりとした雰囲気の中で、作品鑑賞ができます。
月潭の絵は、江戸時代以来、生活のためお客の注文で何でも描くという「野にあった職業絵師」の姿が見えてきますが、史実に忠実に描こうとする月潭の姿勢があります。
鶴岡市在住で月潭の縁戚にあたり、10年以上にわたり、月潭の作品を全国で探し続けてきた池田道正氏(山形大学名誉教授)の努力のおかげで、生涯に4千点の作品を残した月潭の作品のうち、これまで数百点を超える作品が発見され、月潭の生涯も明らかになりました。また池田氏は没後100年を記念して、この9月に「野に生きた絵師 池田月潭の画跡」を刊行し、会場で販売しています。(税込1,000円)
展覧会は10月9日(月・祝日)まで開催され、最終日の9日午後2時から3時半まで、文教の杜ながい(旧丸大扇屋)で、東北芸術工科大学准教授の金子朋樹氏と池田道正氏が、月潭の作品の魅力と個性についてトークイベントを予定しています。定員30名(要予約)で入場無料です。