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米沢俳句会(伊藤勉会長)が2年に一度発行している句集。平成から令和へと元号が変わり、タイトルも令和第一集と新たなった。『みそさざい(鷦鷯)』とは、日本にもいる野鳥の名前に由来している。
「はじめに」の中で、伊藤勉会長は「昭和は戦争、敗戦、その後の後始末と復興のために努力した時代であり、その反省から平成として平和な未来を願って30年が経ち、他国の戦争に巻き込まれずに今日まできたが、阪神淡路大震災や東日本大震災とそれに続く原発事故など、災害は絶え間なく繰り返された。今こそ、国土強靭化と地球温暖化対策が全世界で急務」だと述べる。
米沢俳句会は、戦後すぐの昭和21年にスタートした。米沢俳句会を作り、『みそさざい』を発行した人たちは、戦争を肌で体験し、食糧などの物資の欠乏の中で、必死に生き、日本の復興を担ってきた人たちである。俳句を詠むことは単に教養や遊びではなく、真剣に生きていることの自己確認であり証だったのだろう。
本書では、「寒雷」「暖響」同人でもある原田蘆雪さんが「文芸俳句作りの方向性(理念)」と題する寄稿が掲載。花鳥諷詠・客観写生の高浜虚子と以後の血脈(子孫)による俳句の流れや特徴を述べ、一方、人間探求派の石田波郷・加藤楸邨・中村草田男を紹介している。そして、俳壇に「人間探求」の俳句が定着した。虚子の「ホトトギス」の花鳥諷詠が絶対の権威を誇っていた中に、加藤楸邨は芭蕉研究を通じて風雅の本質に「ひとりごころ」を見ると言い、「孤心」と「自然」との一体化を俳句表現の中に試み、それは人間臭い作品となったと述べる。「大いに時間をかけ、推敲して作句することも自分が作品に生き続けることである」という、原田氏は喜びを語る。
続いて、会友2人、会員20人がそれぞれ10句づつ作品を掲載した。各人がタイトルに使用した語を含む句などから一首紹介する。
をさなごの育つ早さよ冬木の芽 猪俣洋子
涼しさや机一つの吾が書斎 小島緑泉
萩苑に奏づる琴や想夫恋 石口達郎
殿様は宇宙の学者秋桜 磯部知子
牧牛の下山うながす秋時雨 伊藤 勉
君逝くや桜の頃の月の舟 小川孝子
病む妻の気丈な声や寒開ける 神原省治
蛇口よりポトリと落ちる春の音 木村正子
相対論曝して若き吾に会ふ 佐々木昭
泣いて勝つことを覚えし初端午 佐々木泰子
背負われて小若の眠る秋祭り 佐々木清子
新涼の碧き湖雲走る 佐藤和雄
予定組む田の地図広げ春炬燵 佐藤君子
カーテンを拡げて仰ぐ初景色 高橋壽子
秋草の花の見守る我が家かな 田中寛子
秋雨や身に滲み透る帰り道 芦澤 聡
永らえて一病息災春を待つ 富川静枝
大花火令和の空を色どりぬ 永井しげ子
雪囲い解かれ庭木の深呼吸 濱田洋子
青年の学都志向や雪解風 原田蘆雪
山河見て開きすぐ閉づ秋扇 山口雀昭
ひたすらな父の手技や注連飾 渡部美知子
最後に、令和元年5月1日に逝去した会員の佐々木泰子さんを悼む伊藤勉会長の弔辞を掲載している。
書 名 令和第一集『みそさざい』
発 行 米沢俳句会(会長 伊藤勉)
発行日 令和2年(二〇二〇)二月
非売品
(2020年2月21日10:00配信)