newtitle



画像04が表示されない

竹田 歴史講座
米沢日報元旦号PR

▲トップページへ戻る

書評 置賜民俗学会会誌『置賜の民俗 第27号』



minzoku27 置賜民俗学会(梅津幸保会長)が発行する会誌『置賜の民俗』。昨年12月に発行された第27号では、2020年1月に、日本でも初めて確認された新型コロナウイルス感染症が今やパンデミック状態となり、世界では1億人を超える感染と200万人を超える死者が出ている中で(2021年2月3日現在)、私たちの生活や政治・経済に多大な影響を与えている疫病について特集を組んでいる。
 「疫病の民俗」と題する今回の特集では、今まさに人々の関心が高く、過去の歴史や先人の知恵に学ぶと言う意味では、時宜にぴったりと言える内容である。
 今回の特集では、渡邊敏和氏(川西町在住)が「置賜地方における疫病流行の歴史」、「置賜の虎列刺(コレラ)感染についてー 附、置賜の【スペイン風邪】ー」の2本の寄稿、又高橋捷夫氏(米沢市在住)が「米沢の疫病退散信仰と感染症への取り組みの歴史から」、守谷英一氏(白鷹町在住)が「地域に残された【はやりやまい(流行病)】の痕跡 ー塔婆石様(とばいしさま)と毛谷大明神の場合ー」の他に、米沢市にある虎列刺(コレラ)碑を訪ねた渡邊敏和氏、新型コロナ退散の柴燈護摩祈祷の模様を描いた梅津幸保氏(米沢市在住)の合計6本の寄稿が掲載されている。
 米沢地方では明治初めにコレラが流行したが、その歴史を刻んでいる石碑が赤芝や窪田地区に建立されている。渡邊敏和氏らの研究は、その場所を訪ねて、いつ、どこで、どのような疫病が流行したかが時系列的にまとめている。置賜地方での疫病流行の歴史では、天長6年(829)11月、出羽・陸奥国で疫病が大流行したことがまず手始めに書かれている。
 米沢市徳町(米沢日報デジタルの社屋のある町)には、長慶寺の隣接地に疱瘡神社が建立されている。それは正徳2年(1712)に長慶寺住職鉄音和尚が建立したものだが、徳町町内では毎年6月24日に疱瘡神社の祭礼を行い、子供神輿が町内を練り歩いている。すでに300年の歴史がある。
 このように、置賜民俗学会がまとめた今回の資料は、今生きている私たちに対して、そして未来の子孫に対しての警鐘、啓蒙、記録となる一級の資料と言えるだろう。
 他に、会員の研究レポートでは、鈴木真人氏(南陽市在住)が、「置賜の和算」について、梅津幸保氏が林業遺産に認定・登録された米沢市田沢地区を中心に点在する「草木塔」と木流しについて寄稿している。
 いつもながら内容は高度で専門的であることから、「専門家の、専門家による、専門家のための会誌」と言えなくもないが、疫病の研究寄稿を読みながら、このような時こそ「民俗学の出番」だという気がした。(書評 米沢日報デジタル/成澤礼夫)

冊子名 『置賜の民俗』第27号
発 行 置賜民俗学会
事務局 〒993-0041 山形県長井市九野本2078 嶋貫方
    TEL 0238-84-7172
発行日 令和2年12月12日
価 格 1,000円(税込)

(2021年2月3日10:45配信)