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竹田 歴史講座

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書評 『コレクション写真集 鼻煙壺』 小川孝子著

 

snuffbottle-1 中国美術工芸品に「鼻煙壺」と言われるものがある。それは16世紀頃、中国にタバコが伝来したことに始まる。元々、タバコはアメリカに住むインディアンたちに用いられていたもので、15世紀末までは知られていなかったものである。コロンブスによるアメリカ大陸発見以降、ヨーロッパとアメリカの間で船が往復し、水夫によってタバコがヨーロッパにも伝わり、タバコの栽培は、国家や教会に大きな収益をもたらした。
 時期や方法は不明だが、中国で最初にタバコの種が持ち込まれたのは、福建省でその後、南方にも広がっていった。当時のタバコは、嗅ぎタバコで微粒状のタバコの葉と芳香性の植物を混合して作り、鼻煙壺という入れ物からさじで取り出して親指と人差し指でつまんで鼻孔に持って行き、鼻で吸い込むという吸い方である。中国人は昔から、薬や化粧品の容器として小型の壺を使っており、これがタバコを入れる道具として鼻煙壺が利用されるようになった。清朝の乾隆帝はタバコが好きで、鼻煙壺は大流行した。
snuffbottle-2 鼻煙壺の魅力は、身の回りの必需品として、衣服の袖に収めて持ち歩いたから、当時のファッショングッズだった。その上、施されたデザインは中国美術の技術、歴史、伝統などの要素が加味され、いよいよ洗練されていく。小さなサイズに職人芸が観て取れ、中国美術の小宇宙ともいうべきものとなっている。
 米沢市泉町に住む小川孝子さんは、12年前、米沢陶器ガラス美術館いずみを開館したが、その中の主要な展示物が40年間かけて蒐集した300個を超える鼻煙壺コレクションである。日本鼻煙壺愛好会というコレクターの集まりにも参加している。
 同愛好会の仲間に印刷業の人がいて、小川さんは写真集の出版をすることに。40ページにわたり、ガラス製、琥珀、鼈甲(べっこう)、石、象牙、白磁、貝、木などの材質からなる色々なデザインが施された鼻煙壺が網羅されていて、見ていて可愛らしく楽しい。このコレクション写真集を見たら、本物の鼻煙壺が見たくなるだろうし、実際に手にとって触ってみたくなるだろう。鼻煙壺には誠に不思議な魅力がある。
最後に、米沢日報の令和3年元旦号に掲載された小川さんと鼻煙壺の新聞特集記事が掲載されている。(書評 米沢日報デジタル 成澤礼夫)

著者・発行者 小川孝子
発行日 令和3年5月

(2021年5月28日18:30配信)