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竹田 歴史講座

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書評 山形歴史探訪5 清野春樹・荒井久宣著


山形歴史探訪5 『尾花沢・寒河江平塩・西村山・飯豊・簗沢の秘密』

68-yamagata 東海大学山形高等学校に長年勤務し、定年後は同校非常勤講師をされ、他に文芸同人誌『杜』『梟』代表、置賜民俗学会副会長、えみし学会理事、米沢市芸術文化協会副会長など、多方面で多彩な活躍をしている清野春樹氏が、令和3年11月1日、高校の同僚の荒井久宣氏とともに「山形歴史探訪5 尾花沢・寒河江平塩・西村山・飯豊・簗沢の秘密」を出版した。
 清野春樹氏による『山形歴史探訪』は、シリーズ1〜4まで刊行されているが、その特徴は一つの地域に留まらず、山形県内の広い地域を同時に扱っていること。一見相互の関係はなさそうに思えるが実はそうではなく、清野氏は「広い地域を扱うことで視野が広がり、一つ一つの地域はとても奥が深く、特有の歴史が魅力をかもしだしている」と述べる。
  古代、日本には多くの渡来人がきて、稲作、土器、鉄器などの技術を伝えたが、その背景には中国大陸や朝鮮半島での動乱などがあった。日本人の顔つきと中国や朝鮮半島に住む人と似ているのは、このような理由である。本書は地域の古代からの成り立ちと特徴を探ったものであり、時間をかけて足で稼いだ野心的な労作である。
 
 第一章では、「尾花沢の地名探索」と題して、まず延沢を取り上げる。延沢に行く途中「取上」という地名があるが、これは鉱山地帯によくある地名で、鉱山業者や運送業、鉱山で働く人たちから税をと取立てた所だという。南陽市赤湯にも「鳥上坂」「十分一峠」という地名があるが同様と考えてよい。清野氏は延沢にある延沢城跡の登り、延沢(野辺沢)は、アイヌのチャシ(祈祷所)を発展させて山城に仕立てたと考える。野辺沢の名前は、アイヌ語では「尊い 水 下の 淵」、すなわち、「下の淵の尊い水」という意味であり、ここにもアイヌの歴史が息づいている。
 さらに山形県に「しかま」姓を持つ人が多いが、宮城県加美郡色麻町が町名の由来として、「天平年間(729〜749)に播磨国(兵庫県)飾磨(しかま)から移住した兵士が「しかま」を色麻と記した。737年(天平9)陸奥按察使(むつあぜち)大野東人(あずまんど)が多賀城を前進基地として色麻柵跡を作り、開発の歴史は古い」とホームページで紹介している。播磨国飾磨は渡来人の巣と言われ、中国や朝鮮半島から渡来した製鉄の神「伊太代神」が祀られた。それは中国少数民族のミャオ族などの神とも通じる神である。大野東人の遠征には多くの渡来人が同行し、その帰路には各地の鉱山資源の開発のために、その地方に渡来人を入植させたと清野氏は考える。製鉄は兵器の元となる原料を作るもの、兵器の庫から後に「兵庫県」となったと述べるが、実に納得できる話である。

 第二章では、寒河江と平塩を取りあげた。まず寒河江市にある慈恩寺(天平18年(746)開基)や平塩熊野神社(養老5年(721)開山)を紹介する。清野氏はこれらの寺社の存在は、律令政府勢力の進出を物語っているとする。
 置賜地方では、持統3年(689)に、城養蝦夷(きこうえみし)の脂利古(しりこ)が息子二人の仏道修行の許可を求めたことが日本書記に記されている。持統天皇はよろこび、高畠町高安と白鷹町高玉に寺院を建設したと考えられている。
 平塩の由来は、「岩塩層から湧き出る水に硫黄分と塩分が含まれ、この塩水から熱して水分を蒸発させ、残った塩分を冷やしたところから〈冷や塩〉となり、なまって〈平塩〉になった」という。
 寒河江は、文治5年(1189)9月20日、源頼朝が奥州藤原氏を破り、武功のあった鎌倉武士に領地を与えたことで、大江広元が寒河江荘と置賜郡を賜ったことは知られている。清野氏は、寒河江は古代朝鮮語の大集落を意味する寒川「サムガム」に、大江家の「江」を加えて「寒河江」という地名を大江広元が付けたと述べる。寒河江荘に土着したのは、大江広元から5代目の元顕からで、それは1584年に最上義光に滅ぼされるまで続いた。

 第三章は、荒井久宣氏が寒河江市平塩のお寒神祭りについて、第四章は、寒河江・西村山のアイヌ語地名について、第五章は、アイヌ語で解く飯豊町の古代について、第六章は米沢市簗沢の不思議地名めぐりとして、製鉄、鉱山関係、城館関連、宗教関連、アイヌ語をもとに地名の由来を紹介している。
 このように見ると、アイヌや渡来系の人たちの息吹が山形県内のあちらこちらにあることが気付かされる。本書を手に、本書で紹介されたところを、米沢の近くから訪れてみたいという気がしてきた。令和3年、清野氏は1000ページにのぼる『田沢郷土史』を数年がかりでまとめ上げたが、その仕事量はまさに超人的である。その『田沢郷土史』の出版、続けざまに本書の出版とまずはお祝い申し上げたい。(書評 米沢日報デジタル/成澤礼夫)

著 者 清野春樹
発行者 清野春樹
    米沢市城西3−9−6
    TEL 0238-23-1729
定価  1500円+税

(2022年1月21日12:40配信)