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竹田 歴史講座

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書評 川柳作家ベストコレクション 石井頌子

1 新葉館出版(大阪市東成区)が発行する川柳作家ベストコレクション。第一線川柳作家によるシリーズ全200巻の1巻として発行されたもの。
 著者は、昭和12年(1937)生まれの86歳。著者はあとがきの中で、「娘二人が嫁ぎ、胸にぽっかり穴があいたような空しさの中で、俳句や短歌などを作り出した」と書いている。「落ち込んでばかりはいられない、前向きに生きよう」と思い立ち、川柳ならばと軽い気持ちで考えて自己流で作り出したという。著者は現在、山形県米沢市に在住している。
 平成5年、読売新聞に投句した際の選者は、米沢川柳松川吟社会長の片倉沢心先生だったことから、勧められて平成6年1月に入会した。そして著者の祖母の姉(慶応3年生まれ)が、昔、松川吟社の会員で川柳を作っていたことを知る。子供の頃に著者が遊んでもらった祖母の姉が川柳を作っていたことを知ってびっくりしたという。祖母の姉が作った川柳がいま著者の自宅にある屏風の中に残っている。150年あまり前に生まれた人の作品であるが、祖母の姉がその時に何を考えていたかを知ることができるものだ。著者は「遺伝子は争えない」と考えている。
 本書のタイトルには、川柳作家ベストコレクション 石井頌子『踏まれても野花は春を忘れない』というミニタイトルが与えられ、本書は二章から構成されている。そして第一章の「つれづれなるままに」が120句、第二章の「あしあと」が120句の計240句が掲載されている。

 終章は神に委ねる白い地図
 クラス会入れ歯自慢で盛り上がる
 古傷は時効笑いの種子にする
 その話聞いたと言わぬのも情け
 人間の鮮度落とさぬ好奇心
 総活躍就活も入れ膨らます
 究極の心のサプリ大笑い
 針千本人間だけが嘘をつく
 青春の視野になかった下り坂
 作り笑いのまま色褪せていく造花

 石井氏の川柳からなるほどと思った10句を選んでみた。すると、齢を重ねていく著者の見る世界と今年、高齢者(65歳)の仲間入りをする私の感性に何と共感する部分が多いことかと気づく。齢を重ねていくことは、それまで見えなかったことが見えてくることでもある。そして、多少のことはあってもへこたれずに、生きていく強さも身についていく。石井氏の川柳には、そのようなたくましさが感じられる。
「踏まれても野花は春を忘れない」は、米沢の冬の厳しい寒さに耐えて、野花が春にはまた芽を出し花を咲かせるように、私たち人間も人生の中ではしばしば厳しい試練に遭遇する時もあるが、希望を忘れずに自分の夢や目標を追い求めていくことが大事だと教えておられるように思う。
 毎年、著者から米沢日報元旦号に絵手紙の寄稿を頂いているほか、クロスワードパズルの解答が寄せられている。しかし、著者が川柳を作っているとは令和4年年末まで知らなかった。クロスワードパズルの解答と一緒に、この本が袋の中に入っていて、初めて川柳作家と知った。(米沢日報デジタル 成澤礼夫記)

著 名 川柳作家ベストコレクション『踏まれても野花は春を忘れない』
著 者 石井頌子(いしい・ようこ)
発行人 松岡恭子
発行所 新葉館出版
発行日 2018年7月8日
定 価 1200円+税

(2023年2月1日16:45配信)