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竹田 歴史講座

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書評 上杉鷹山の藩政改革と金主たち(簡約版)


『上杉鷹山の藩政改革と金主たち〜米沢藩の借金・再生史』(簡約版)

89 2021年6月に発行された本書初版は、中央紙のコラムも取り上げられるなど、大きな反響をもたらした。学術書としての詳細な分析過程や細かな事実なども入れ、総頁数は330頁を超える大作である。昨年6月には、初版を改訂した詳細版(354頁)が発行され、この度、詳細版の半分の分量である簡略版が発行された。結論部分を中心に纏めたものである。
 著者の出身地米沢は、江戸時代を通して米沢藩が260年余り支配した土地である。 筆者は、上杉鷹山関連のテレビ番組で、米沢藩の借金が現在の価値で200億円と聞きその巨額さを実感し、ファイナンス(財政・金融)面から定量的研究を思い至ったという。どのように米沢藩財政が破綻寸前まで悪化したのか、鷹山改革のどのような施策で財政を立て直したのか、さらに米沢藩の赤字財政の資金繰りを誰がどのように応じたのか、の3点を調べた。
 本書が他の鷹山に関する書籍と根本的に違うのは、米沢藩の借金に応じた金主(大名に金を貸した者)に焦点を当てたことで、金主は単なる金貸しではなく、鷹山の藩政改革を理解し、熱心に応援する支援者であったことである。
 第1章では、鷹山以前の米沢藩における財政破綻の過程を緻密に分析している。その中で、幕府による諸藩に対する手伝い普請(軍役を含む)は、諸藩の財政を疲弊させるために行わせたもの。家康に刃向かった米沢藩上杉家に対しての手伝い普請は過酷を極めた。
 第2章では、上杉鷹山の3期にわたる藩政改革について、第3章では、米沢藩を支えた金主たちと題して、資金繰りの中核を担った江戸・三谷家、酒田・本間家、越後・渡辺家、三輪家の4大金主を主に扱っている。そして各家に保管されてあった取引帳から貸付の収益率などを推計した。
 財政や人口動態、幕府による手伝い普請、吉良家支援など、客観的な数字が多く出てくる。加藤氏の緻密な分析は、米沢藩の歴史や上杉鷹山研究に関わる者にとっては、大変に大きな一石を投じたものとなった。

発行者 加藤国雄
発 行 令和5年6月15日発行

(2023年11月26日15:00配信)