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公益財団法人七尾城址文化事業団(茶谷義隆理事長=七尾市長)が年に一度発行している機関誌。現代につながる七尾の歴史や文化を掘り起こし、七尾の魅力を全国へ発信している。
室町時代、七尾に日本で最大規模の山岳城である七尾城が築かれた。この七尾城の山頂には、菊尾、亀尾、松尾、虎尾、竹尾、梅尾、龍尾という七つの屋根が続くことからこの名がついた。本書の名前は、この七つの屋根に由来する。
『七つ尾』では、毎号、十分に吟味された特集記事が目を引く。本号の「この人に行く」では、カニカマ50年の節目を迎えた株式会社スギヨ代表取締役社長の杉野哲也氏の特集を掲載した。魚問屋として開業して400年近い老舗であるスギヨ。この会社の名前を知らなくても、「カニカマ」といえば、日本人で知らない人はいないはず。同社はカニの味のかまぼことして商品化を行い、今や日本の食卓にはなくてはならない定番食品となっている。今では海外の工場でも生産しており、同社はまさにグローバル企業である。そのカニカマは、今年発売50年を迎えるという。杉野社長は、「カニを食べる文化のない地域だったら、恐らくカニカマという発想は出てこないかった」と述べているが、誠に同感である。この記事は誠に興味深く、とても面白い内容となっている。イチオシの記事である。
市長対談では、無名塾の仲代達也と茶谷義隆七尾市長が対談を行っている。無名塾は能登演劇堂で「いのちぼうにふろう物語」の公演を30回行った。昨年末に90歳となった仲代達也氏は役者生活70年となる。そしていう、「役者っていうものは八〇すぎると名優扱いされる」というが、「姿勢や声の調子とかがいろいろ衰えてくる」と述べる。「怪我をしないように最後の立ち回りを行った」とロングラン公演を無事に終えた感想を述べている。そして能登を回っての感想は、家の造作で、家の建て方、黒い瓦がすごいと述べている。ぜひ、能登を訪れてみたくなった。
他には奈良大学教授で、城郭考古学の第一人者である千田嘉博氏と茶谷市長の対談、山の寺寺院群の16ヶ寺巡りも興味ふかい。由緒や所蔵の重要文化財、拝観料、配置図などを示している。
他に、斎藤秀夫氏(東京都八王子市在住)が、「能登の地形と七尾城造営」と題して寄稿した。利根川信氏は、能登守護畠山家のその後⑧と題して、毎回シリーズで寄稿している。
他に、七尾城跡写真コンテスト作品の誌上掲載、七尾の逸品昼飯では、そば、カキフライ、うどん、カツサンドが紹介されている。市内にある4高校の校歌を写真付きで紹介した。他には、俳句、短歌、写真など内容盛沢山で、活字で紹介するよりも実物を手にすることをお勧めする。毎度ながら、七尾の魅力が十二分に伝わってくる中身が濃い編集である。
発 行 公益財団法人七尾城址文化事業団
編 集 七つ尾編集委員会 事務局 懐古館
TEL 0767-53-6674
発行日 令和5年3月
定 価 1,200円(税込)
(2023年11月26日15:45配信)