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竹田 歴史講座

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書評 「犬川地区の残したいもの 語り伝えたいこと」


91 山形県東置賜郡川西町犬川地区は、川西町の北部に位置し、近くには国指定の下小松古墳群を有する田園地帯である。明治初期、英国人女性旅行家のイザベラ・バードも犬川の近くを通り、米沢盆地を「東洋のアルカディア」と呼んだ。
 平成25年夏、川西町文化財保護協会会員と有志により、犬川地区内石碑等の調査が行われ、令和4年にも再調査が行われた。その際に文化財としてふさわしいものを14件選定し、町文化財保護協会に報告した。その時の参加者が犬川地区文化財等調査委員会を立ち上げ、地区内全戸を対象にした聞き取り調査、現地調査を行ったところ、約200件ほどの文化財などがまとまった。令和5年4月、いぬかわ振興協議会総会で、犬川地区文化財等冊子の作成と全戸配布を決定して、冊子編集委員会(編集委員長 川崎忠志 犬川地区センター長・いぬかわ)が組織化され、令和5年11月、犬川地区交流センター(川崎忠志センター長)が、「犬川地区の残したいもの 語り伝えたいこと」の冊子を発行した。
 冊子は40頁にわたり、昭和期以降の地区内文化財の所在を調査し、読みやすくカラー写真でまとめている。地区探訪の手引き書となり、地域に一層の親しみが育まれることが期待されている。とりわけ、地方は人口減少や過疎化が進行している中で、地域の歴史、文化、民俗をどう次の世代に継承していくかが大きな課題となっている。その課題に対して、この冊子は一つの解決策を示しているといえよう。編集に当たった方々の危機感と使命感がその原動力となったかもしれない。
 内容は、重要な遺跡・文化財、神社・寺院、石碑、くらし文化、集落・屋敷、くらしの遺産、全国に知られたこと、名勝・景観、民話・植物の里、犬川地区略図から構成されている。
 重要な遺跡・文化財では、昭和54年、土地改良事業で発見された平安時代の役所跡といわれる「道伝遺跡」が紹介されている。この一帯の地下に、丸太の柱が基盤上に立ち並び、千年の間、土の中で眠っていたもので、昭和54年の発掘調査では、日常の土器や木簡には寛平八年(896年)と記された文字が見つかり、平安時代の郡役所跡だと判明した。征夷大将軍坂上田村麿が東北に来て100年足らずの時期である。素晴らしい歴史遺産があるものだ。
 また同地区には、平成12年に国指定史跡となった「下小松古墳群」がある。東北地方における大和朝廷との関係を具体的に示すもので、西暦400年頃、日本各地で円墳や前方後円墳が盛んに作られたが、下小松山にはたくさんの古墳が点在しているが、中央政府がこの地を重視したからだろう。平成22年に山形県景観条例「置賜景観回廊」に指定され、整備されている。
 本冊子は、地区内全戸を対象にした聞き取り調査、現地調査を行っただけあって、極めて細かなところまで調べ上げられている。今後、この冊子が一つのベースとなり、置賜地方の各地区で歴史、文化、民俗の掘り下げが行われていく際のモデルになるに違いない。専門的な学術冊子と違い、小中学生でも気軽に楽しく読め、学べる編集方法がとても親切である。(書評 成澤礼夫)

発行者 犬川地区交流センター 
発行日 令和5年11月

(2023年11月26日15:45配信)