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4月1日より、米沢市上杉博物館館長に就任した佐藤広明氏に抱負を伺った。
ーーまずは、新館長としての抱負をお願いします。
佐藤氏 上杉博物館は米沢のシンボルであり、この地区の観光の拠点でもあります。そして、市民や観光客の方々にとって、上杉家や置賜の歴史に触れる重要な施設にもなっています。当館には歴史、美術の学芸員が5人おりますが、市民に親しまれ、県内外の研究者からも信頼される施設でなければなりません。そのためには、自分自身をはじめ、学芸員もしっかり勉強し、調査研究機能を高めなければなりません。
また、地元の学校、子どもたちが当館で勉強するといった"博学連携"にも力を入れ、小中学生、高校生が気軽に足を運べる施設づくりに努めていきたいと思っています。来場者に喜んでもらえるような企画、体験プログラムを開発していきたいと思っています。
ーー上杉博物館には上杉氏ゆかりの貴重な品々や国宝、資料が保管されていますね。
佐藤氏 現在約2万9000点の資料を保管しており、国指定文化財としては国宝が紙本金地著色洛中洛外図狩野永徳筆六曲屏風(上杉本洛中洛外図屏風)、上杉家文書の2件、重要文化財(重文)は太刀銘一など2件となっています。様々な文化施設でも取り組まれていますが、当館でも資料のデジタル化を進めていきたいですね。以前の赴任先である県立博物館では、資料をデジタル化してウェブ上に公開しておりました。当館でも準備は進めておりますが、早い段階で実現できればと思います。
ーー政府は国の重文を国宝に格上げしようとしています。歴史的資料を再度見直すきっかけになると思いますが。
佐藤氏 県内では建造物を含めても国宝は6件しかありません。重文から国宝に上がるまで大分時間がかかります。重文から国宝に指定される努力をしていきたいと思います。
ーー所蔵品には、なかなかお目見えできない資料も多くあり、市民が見たいものをどのようにマッチングさせていきますか。
佐藤氏 国宝の公開日数は年間60日という制限があります。他館への貸し出しもこの日数に数えられてしまいますが、可能な限り公開をしていきたいと思っています。当館にあるその他の書物や文献などについても、市民の宝でもありますし、より多く展示できるように努めていきたいですね。
国宝や重文とはいえ、旧字などでなかなか文書だけでは楽しむことができません。そこで文書と絵、屏風、刀などと合わせ、見て楽しめるビジュアル的要素もとり入れながら展示し、目に訴えるような展示をしていきたいと考えています。
ーー今後の企画展の予定について教えて下さい。
佐藤氏 今年の米沢上杉まつりに合わせ、上杉家を全面に出した戦国のメモリー展「〜合戦図屏風と上杉の記録と〜」が今月13日より始まりました。前期は5月12日まで、後期は5月18日から6月16日まで行われます。期間中は同時開催として国宝上杉本洛中洛外図屏風の原本展示も延べ36日間(①4月27日〜5月12日、②6月15日〜7月4日)行われます。まだ見ていない、もう一度見たいという方に、ぜひお越しいただければ幸いです。
さとうひろあき
昭和27年南陽市生まれ。米沢興譲館高校、新潟大学人文学部史学科卒業、初任は県立新庄北高校、米沢興譲館、県立博物館、米沢興譲館高校校長を経て平成25年4月から現職。