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〈初折表〉
吹く風の季節を知らする白露かな 譲
揺れ移りゆく穂芒の群 ひろ子
夜半の月実りの里は静まりて つとむ
案山子の陰に鳴くものは何 加津
法の道縋る生きとし生けるもの 昭
折に降る雨恵みぞ深き 善照
湯の街に響く下駄音風さやぐ ひろ子
浴衣姿で土産を選び 譲
〈初折裏〉
いにしへの黒塀家並み片かげり 加津
見越しの松に鳥啼きをり つとむ
夢覚めて涙こぼるる小夜枕 善照
遥かかなしき初恋の頃 昭
杖を突き坂の途中で立ち止まり 譲
見上ぐる先に冬の虹出づ ひろ子
晴天をドローンの翔る雪の原 つとむ
赤きポストに返信を入れ 加津
山頭火らしき人ゆく月おぼろ 昭
庵の畔に梅匂ふころ 善照
手つなぎの道祖神に満つ犬ふぐり ひろ子
足投げ出せば鳥雲に入る 譲
白き紙拡げて居るや花の夜 加津
湧きくる想ひ大筆で書く つとむ
〈名残表〉
程遠き旅の門出を祝ふ日に 善照
人の情を心にとめて 昭
涼風に舟唄流る最上川 譲
山揺るがせて滝のとどろく ひろ子
蕉翁の跡を尋ねて旧き道 つとむ
青空ながめ佇みてをり 加津
梵鐘や人の心の奥のぞく 昭
迷ひを深め巡る一年 善照
初雪の散華の如く煌めきぬ ひろ子
胸のしこりもやがて解けゆき 譲
黄昏れて古き時計の鳴りにけり 加津
銀杏黄葉の仄明かき庭 つとむ
吊し柿隅なき月に照らされて 善照
野にありてこそ黄菊白菊 昭
〈名残裏〉
霧はれて一際著く目に映り 譲
猫のじゃれつく赤き折鶴 ひろ子
いつからか下着の色を替へてみて つとむ
有りや無しやと捜し求めて 加津
春宵や座敷わらしの居る気配 昭
霞の衣まとひて歩む 善照
暫くは花の吹雪に身を委ね ひろ子
諸鳥啼きて雨あがる空 加津
挙句
譲 七 ひろ子 八 つとむ 七 昭 七 加津 八 善照 七
(2021年1月 18日15:30配信)