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<初折表>
うきたまは実りの匂ひ天高し つとむ
わが家の柿もグンと色づき 加津
月よりの使者らし香具也(かぐや)地に降りて 昭
見渡す限り花野となりぬ ひろ子
分け入りて日も暮れたるに帰り来ず 讓
しづ心なく一人待ちをり つとむ
ひとはみな出会ひと別れくり返し 加津
星を友とし方丈住まひ 昭

<初折裏>
寒き夜の夜具一枚を重ねけり ひろ子
雪は黙って降り積もるらし 讓
こまごまとたづき気にする朝となり つとむ
夕日を浴びて四方の美(うるわ)し 加津
久々に出会ふ旧友停留所 昭
屋台の酒に話ははづむ ひろ子
川風に吹かれ行き交ふ人の波 讓
河鹿の声に足を止(どど)めて つとむ
只見川月と葉ざくら映したる 加津
仰げば遥か峠の小径 昭
センサーは五感にありて鳥帰る ひろ子
春はあけぼの雲棚引きて 讓
鐘の音に心をひらく花の下 つとむ
青墨をする朧(おぼろ)の夜に 加津

<名残折表>
赤糸を結ぶ台帳神の庭 昭
最終列車点となりゆく ひろ子
後ろ髪引かるる思ひ残しつつ 讓
面影ばかり眼裏に立ち つとむ
かの宵に別れし人はいまいづこ 加津
去りゆくシテに今年を惜しむ 昭
雪吊の弦のごとくに風の鳴る ひろ子
鄙(ひな)の調べを聞く旅の宿 讓
ひとり酌む地酒の酔ひも朗らかに つとむ
寝る前によむ本のつづきを 加津
百代の過客行き交ふ宿場町 昭
新そばの香の口に広がる ひろ子
賑はひし月見の宴も締めとなり 讓
友と帰りぬ夜寒の街を つとむ

<名残折裏>
流れ星願ふことすら忘れたる 加津
語り部しばし間を置きてまた 昭
のら猫の家を覗きて通り過ぐ ひろ子
境の塀を軽々と越え 讓
路地裏の謡の声も春めきて つとむ
おぼろの中を一人歩めば 加津
日と水と豊かにありて花万朶 ひろ子
巫女舞ひ納むまほろばの宮 昭