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村山地域地球温暖化対策協議会(山﨑多代里会長)設立15周年記念講演会が5月22日、村山総合支庁で開催されました。
講師は、現在、パキスタン・アフガニスタンで医師としての活動を行う傍ら、アフガニスタンで農村復興のための灌漑用水路建設に従事しているPMS(ピース・ジャパン・メディカルサービス)総院長、ペシャワール会(※)の中村哲氏です。(写真左=講演する中村哲氏)
はじめに同協議会の山﨑多代里会長が「地球温暖化対策協議会は設立15周年を迎えますが15年でこれほど早く(地球の)温暖化が進むとは思っていなかったのではないでしょうか。私たちは中村さんと同じことはできませんが、中村さんの経験から学ぶことは沢山あります」と挨拶しました。
続いて記念講演では、中村哲氏が「アフガニスタンから考える〜気候変動で私たちができること〜」と題して、スライドを使いながら2時間講演を行いました。
中村哲氏は福岡県出身、九州大学医学部を卒業後、国内の病院勤務を経て1984年、パキスタン北西辺境州(現カイバル・パクトゥン・クワ州)の州都ペシャワールに赴任し、ハンセン病を中心とする医療活動を開始しました。また難民キャンプで、アフガニスタン難民の診療に携わり、アフガニスタン国内にも活動を広げました。
2000年からは気候変動等で干ばつが厳しくなるアフガニスタンで、飲料水・灌漑用井戸事業を始め、2003年から農村復興のため大掛かりな水利事業に携わり、現在に至っています。
中村氏は講演の中で、「アフガニスタンでは温暖化が深刻な問題」とし、現地での状況を解説しました。
アフガニスタンは、ゴビ砂漠の彼方にある乾燥地帯にあり、7000メートル級の山々が連なります。2〜3千万人の人口のほとんどが農業で生活し、数十年前までは自給自足が可能でした。その理由は山々の雪が夏に溶け出し、農業で豊かな実りを約束したからです。アフガニスタンでは「金がなくても食っていけるが雪がなければ食っていけない」ということわざがあることを紹介しました。しかし、近年は食料自給率が以前の半分くらいまで落ちているとのことです。
1979年に、旧ソ連が10万人の軍隊をアフガニスタンに派遣し、10年間のアフガン戦争が起こったことや、2000年に大干ばつが発生し、渇水、砂漠化となり、村人たちの生存が不可能な事態になったと述べました。
中村氏らはアフガニスタンに1600本の井戸を掘り、2003年から農業用水路の建設を始め、現在、その全長が27キロとなったことや、それによって復旧した田畑は3000ヘクタールに及び、15万人の生存を確保できたと述べました。その際に工事に連日500人が従事し、延べ100万人以上の雇用が発生するなど、住民の生活基盤を確保したことで、地域の治安安定にも寄与しているとしました。その際の総工費は約15億円を要したものの、ペシャワール会員の会費と支援者の寄付で実現できたとしました。
建設した用水路事業では日本の伝統的な治水技術である斜め堰、堰板方式取水門、石出し水制などを用い、各地で画期的な農村復興をもたらす可能性があるしました。
これらを踏まえて、今後に実施する内容は、用水路の最終地点であるガンベリ砂漠に「自立定着村」を作り、治水技術を習得した作業員やその家族の入植を目指し、農業をやりながら用水路の修復保全を行うことで、中村氏らはアフガニスタンの1地域に復興支援モデルを提示できたのではないかと成果をあげました。(写真左=講演後、著作のサイン会)
(※)ペシャワール会は、1983年9月、中村哲医師のパキスタンでの医療活動を支援する目的で結成され、現在は、アフガニスタンでの、医療活動、灌漑水利事業等、総合的農村復興事業を支援している。(ペシャワール会 PMS(平和医療団・日本)パンフレットによる)
問い合わせ
ペシャワール会事務局
福岡市中央区春吉1−16−8 VEGA天神南601号
電話 092ー731−2372
(2019年7月14日16:40配信)