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竹田 歴史講座

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米沢市上杉博物館 天文学者らのトークイベント開催


 

cosmos-1 米沢市上杉博物館は、今年2月6日(土)から3月21日(日)まで、企画展「138億光年 宇宙の旅」を開催中である。ハッブル宇宙望遠鏡や、NASAやJAXAなどの探査機が撮影した写真などが会場いっぱいに展示され、まるで宇宙の只中にいる気分になってくる。また会場には、はやぶさ2の模型が小惑星イトカワにサンプルリターンで接地している様などの模型もあり、宇宙の138億年にわたる神秘な世界と宇宙観測の歴史などを見ることができる。
 企画展に関連して、3月14日、置賜文化ホールで、国立天文台副台長の渡部潤一氏、国立天文台教授の本間希樹氏、JAXA名誉教授・上杉家当主・上杉博物館名誉館長の上杉邦憲氏の日本を代表する3名の研究者が、「惑星探査・天文学の最前線」をテーマに2時間半のトークイベントが行われた。
cosmos-2 第一部では、3名の講師が一人ひとり専門分野の講演を行った。
 渡部氏は「138億光年の軌跡」と題し、国際天文学連合(IAU)で惑星定義委員として、準惑星という新たなカテゴリーを作り、冥王星をそれまでの惑星から準惑星にした経緯などを述べた。地球は太陽から3番目に位置し、太陽系では表面に液体の水を保持した惑星は地球以外になく、重力があり、大気を保持し、温度もちょうどよいハビタブル・ゾーンにあると説明した。またMITAKAというシュミレーションソフトで美しい星空が眺められる事を紹介した。渡部氏は2035年9月2日の皆既日食は米沢では見れないが、2609年4月26日の皆既日食は米沢でも見ることができると述べたが、会場にいる人で600年後には誰も存在していないことから笑いの渦が起きた。
cosmos-3 上杉氏は「宇宙の不思議を探る〜太陽系の探査〜」と題して、ハレー彗星探査機「さきがけ」、小惑星探査機「はやぶさ」などの開発の経緯を説明した。小惑星に探査機を飛ばす理由は、太陽系がどうやって生まれ、どう進化したのかを知るためだが、その中で太陽系探査の技術的な難しさを解説した。特に小惑星に行ってのサンプル採取を行う「サンプル・リターン」は、探査機を自転する小惑星と同じ速度に回転させることが必要であり、秒速1メートルのズレは1日で80キロメートルの違いになり最高の難易度だと説明した。
 また、採取したサンプルを入れたカプセルを地球に帰還させるときに、探査機から切り離す方法として、上杉氏が研究した結果、出雲地方から出る「玉鋼」で作った刃が最もよい結果が出たとした。その際に、刃を落とすのに使用する火薬量や電池の耐用年数が、厳しい宇宙環境を飛んできた探査機はやぶさや、はやぶさ2で上手くいくか心配で眠れなかったと述べた。
cosmos-4 本間氏は「電波で見る銀河とブラックホール」と題して、超長基線電波干渉計(VLBI)の技術を用いた天の川銀河やブラックホールの観測について説明した。 2019年に、本間氏も関係する国際プロジェクトEHTは、初めてブラックホールの撮影に成功し、M87(距離は550cosmos-50万光年)の中にある巨大ブラックホールを撮影した。この写真はブラックホールの存在を視覚的に示したもので、100年にわたる疑問に終止符を打ったと述べた。
(写真左=楕円銀河M87に潜むブラックホールの影)
 EHT Collaboration

 
 続いて、第二部では、3名がステージ上でそれぞれ司会者からの質問に答えるクロストークが行われた。
 上杉氏はハレー彗星探査機の開発にあたって文部省に「(今やらないと次は)76年待たないとできない」(ハレー彗星の周期は76年)と予算をお願いして付けてもらったと紹介した。その成功により、日本の宇宙研が世界の宇宙研究者から仲間として認められたと述べた。また「20年たったら宇宙は普通になっている」として、誰でもが近未来の宇宙旅行などが可能となる予想を話した。
 「なぜ宇宙を探るのか」という問いに、本間氏は「宇宙の謎に惹かれている。宇宙を知ればなぜ生命が誕生したのか、人間に帰ってくる」と述べ、渡部氏も「NASAの画像はとても印象的で、この画像から色々な想像力が惹起され、地球や人類を振り返ったりするのが魅力」と話した。