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米沢市遠山町にある愛宕神社・羽山神社(伊藤温彦宮司)では、「神社カフェ」と称して、社務所を会場に種々の集いを開催している。蛍シーズンの7月12日、ゲンジ蛍とカジカ蛙愛護会会長の島津憲一氏(高畠町二井宿在住)を講師に、蛍に関する講話の後、蛍観賞会を開催した。当日は10名余りが参加した。
(写真右=講演を行う島津憲一氏)
島津氏は、「蛍の出現は白亜紀の1億年前に現れ、恐竜たちと蛍は一緒の世界にいた」と述べ、400万年前に地球上に現れた人類よりもはるかに早い出現であるとした。
古事記には和銅5年(712)に、「ホタルが夜身(よみ)を輝かせて飛んでいた」という記述や、万葉集(759)の長歌にも一首詠まれ、日本人にも馴染みの深い生物であることを紹介した。また関ヶ原の戦いの後、会津120万石から米沢30万石となった上杉家の執政である直江兼続は、亀岡文殊堂で連歌会を開催し、その中で蛍を詩の中に読んでいる。
世界には、約2000種(内水生は7種)、日本には46種(内水生は5種)の蛍がいるが、愛宕山神域には、ゲンジ蛍、ヘイケ蛍、ヒメ蛍、クロマド蛍の4種類が生息する。このうち、ゲンジ蛍は世界最大の蛍で、北海道を除く全国の河川に分布し、蛍の幼虫の餌は巻貝の一種であるカワニナであるが、カワニナは農薬や中性洗剤に極度に弱く、蛍が激減している原因となっているとした。
蛍が光るメカニズムは、ルシフェリンとルシフェラーゼによる反応で、オスは夜の8時が活動が活発になる。オスとメスの比率は、オス4匹に対してメス1匹で、メスは光の強さでオスを選ぶ。オスがメスに近づいて強く発光し、メスがこれに応えて発光すると求愛が成立し、すぐに交尾を行い、メスは川岸の苔に産卵する。メスの産卵数は、約800個〜1000個で、20日くらいで孵化するが、そのうち成虫になるのは10匹程度と自然界での生き残りはたやすくない。一方、ヘイケ蛍は60個しか産卵しないという。ゲンジ蛍の光り方は、西日本型、名古屋型、東日本型があり、光る時間に差がある。
島津氏は蛍保護で大切なことは、「遮光」、そして農薬、中性洗剤などで「水質を汚染しない」ことであるとした。中性洗剤は油を落とすには効果的だが、中和するには大量の水を必要とすると述べた。
続いて、愛宕神社裏手にある沢まで行き、蛍観賞会を開催した。当日は雨上がりで気温、湿度ともに高く、数十匹の蛍が空中を舞うように飛ぶ姿に参加者は歓声をあげながら、スマホで写真や動画を撮影していた。市内からの光が届かない場所であることから、蛍は空中高く飛んでいた。この沢に蛍がいることは市民にもほとんど知られていない。