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米沢市上杉博物館(島津眞一館長)は、8月7日(土)から10月10日(日)まで、開館20周年記念特別展「狩野派 ~永徳とその周辺~」を開催している。
特別展では、織田信長が上杉謙信に贈ったとされる国宝「上杉本洛中洛外図屏風」を始め(後期に展示)、国内の博物館が所蔵する戦国時代から桃山時代の狩野派の代表的な作品が展示され、狩野派がどのように発展していったか。また狩野派を代表する永徳の画業、江戸幕府の終焉とともにお抱え絵師だった狩野派も衰退していくという時代の動向なども知ることができる内容となっている。
同館学芸員主査阿部哲人氏が8月6日、内部職員向け説明会で作品解説を行い、鎌倉時代以降、宗や元などの中国絵画をベースに描かれた漢画と、平安時代以来、日本の景物を対象に描かれてきたやまと絵の技術や画題などにおける融合が加速度的に進んでいったとし、その中で成立、発展したのが「洛中洛外図」だったと述べた。
前期は、花鳥図や人物図などを中心に展示し、狩野派父祖、正信・元信らから永徳に至る展開や、永徳の画業の全体像を紹介する。泰巌歴史美術館所蔵の「四季花鳥図屏風」(狩野元信作)、東京国立博物館所蔵の国宝「檜図屏風」、京都国立博物館所蔵の重要文化財「仙人高士図屏風」、九州国立博物館所蔵の「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」の狩野永徳作のほか、など、大作が所狭しと並んでいる。
「四季花鳥図屏風」は、江戸時代末期は、米沢藩最後の藩主上杉茂憲が所有していたもので、親子の虎が描かれている。虎は霊獣として邪気を払うことや幽寂悟道の禅の心理を表す。
「檜図屏風」は、永徳の遺作とされるもので、檜が画面いっぱいに描かれ、太い幹が圧巻である。(写真左=「檜図屏風」右隻 東京国立博物館所蔵)
また「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」では、鳥たちがお互いにコミュニケーションを取っているように描かれ、生き生きとした情景が伝わってくる。その中で木の枝の急峻な傾きの場所に、鳥が止まっているのは普通ありえないことで、永徳の技術がまだ整っていない若い時期のものではないかと指摘されていると阿部学芸員は述べた。
9月11日に始まる後期では、洛中洛外図屏風の成立につながる風俗画の視点から狩野派を中心とした作品を紹介する予定。
嵯峨美術短期大学教授の山本英男氏を迎えての記念講演会「狩野派の繁栄ー元信から永徳へー」が、8月28日午後2時から開催予定。(定員先着80名要事前申し込み)
入場料金 一般800円、高大生500円、小中生300円
休館日 8月25日、9月22日