近藤洋介米沢市長は、9月24日、米沢市役所で記者会見を開き、9月19日付で発表された「(仮称)栗子山風力発電事業 環境影響評価準備書」に対する経済産業大臣の勧告に関して、コメントを発表した。
近藤市長は、「勧告は、米沢市及び山形県知事意見等を十分に勘案された内容となっており、特に、①イヌワシに関する調査不備、②植生に関する低評価、③残留騒音調査方法の不備、④大規模な土地の改変及び緑化の見直しの4点について具体的指摘がなされており、事業計画の根幹となる部分に対する極めて厳しい内容と重く受け止めている。」との認識を述べた。
特にイヌワシについては、「専門家による協議会を設けるべきなど、事業者のこれまでの主張とは違った厳しい内容であり、これまで米沢市が主張、懸念してきた内容が強く反映されたもの」との受け止めを示した。
また事業計画の今後の検討に当たっては、「山形県や米沢市など関係地方公共団体等と調整を十分に行い、今後の環境影響評価手続きを実施すること」や、「今後の修正内容等についても地域住民等に丁寧かつ十分な説明を行うことなどが示されており、地域との共生なくしては事業を進めることはできないことを示している。」と述べ、米沢市として「JR東日本エネルギー株式会社が今回の勧告及び様々な意見、米沢市からの全面白紙撤回の申し入れ等を踏まえて、適切な判断が下されることを期待したい。」と発言した。
質疑では、「市は白紙撤回を求めているが、業社側が再度確認しながら事業を進めるという選択肢が残されている勧告になっているのではないか」との質問に対し、近藤市長は「環境アセス準備書段階の勧告は行政側がやめなさいという勧告はなく、基本的にそれは想定していない。経済活動は原則自由という憲法の考え方に則った上で、やる場合は条件を出すというのが法律の立て付け」と説明し、「市民の懸念に対してクリアしたことが客観的に証明されるのであれば反対という理屈は成り立たないと思う。」と述べ、これまでの「米沢市は全面白紙撤回を求める」とは、若干トーンの異なる発言も行った。
また「米沢市として風力発電が絶対にノーという考えではなく、今回の風力発電事業について白紙と言っているのであり、市民の懸念が全てクリアされる風力発電であれば、それは良いということが理屈としてはあり得る。現時点では、これは〈ダメです〉と申し上げているが、これは改められれば全く門を閉ざすというわけではない。」とした。
9月11日におこなわれた面談の際に事業者側から、「(経済産業大臣の)勧告もあるので時間が欲しい」という話があった件で、近藤市長は「あまり、いたずらに時間を延ばすことがいいとは思わない。事業者が対応を含めて、行政との信頼関係ということになるので、ぜひ適切に判断して欲しい。」と述べた。
近藤市長が要望した「全面白紙撤回」という言葉の重みと、今回の勧告の中身が釣り合っていないのではとの問いには、「勧告の中身をよく読むと、設置の取りやめ、配置の変更、(イヌワシについて)第3者の意見を聞きなさい、まとまった報告をしなさい等、まさに事業の根幹を見直す内容となっている」との考えを示し、釣り合っていないのではという問に反論した。