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米沢女子短期大学(阿部宏慈学長)は、毎年、学外から様々な講師を招き、公開講座として全15回の「米沢女子短期大学総合教養講座」を開講している。今年度13回目となる1月9日の講座には、舟山やすえ参議院議員が講師となり、若者・女性活躍についての講義を行った。
舟山氏は埼玉県越谷市生まれでの57歳、北海道大学農学部農業経営学科卒業後、農林水産省に10年間勤務し、結婚を機に同省を退職、夫の実家のある山形県小国町に転居。2007年に山形県選挙区選出の参議院議員として初当選、現在は3期目で、国民民主党・新緑風会の議員会長を務める。
舟山氏は、「Boys and Girls Be Ambitious!」をテーマに90分にわたって講義し、学生、市民ら約100人が聴講した。
はじめに「Boys be ambitious!」は、北海道大学の前身である札幌農学校で初代副校長となったクラーク博士の「少年よ、大志を抱け!」として知られている言葉。
舟山氏は、自身が生まれた1966年は、ビートルズが来日し武道館でのコンサートを行ったことや、三種の神器と言われるカラーテレビ、クーラー、車が普及し始めた時代であり、ウルトラマン、仮面ライダー、ひみつのアッコちゃん、魔法使いサリーなどのテレビ番組が放映されていたと述べ、小学校1年生の昭和48年には、オイルショックが起こるなどの時代背景を説明した。
毎年夏休みの1ヶ月間は、母の実家である北海道に遊びに行き、他の11ヶ月間とは見る景色も違い、そこで農村や農作業の風景を見たことがその後の人生に大きな影響を与えたとした。
1980年代、エチオピアを中心にアフリカの飢餓問題がクローズアップされ、舟山氏は衝撃を受けた。1984年には、英国、米国で、有名な歌手らバンド・エイドというコンサートを通して、アフリカ支援の動きが起こり、舟山氏は食料問題への関心を持った。農学部で学ぶことを思い立ち、北海道大学に進学、農業経済を専攻した。「なぜ食料基地とされる北海道の大規模農家の負債が大きいのか」という疑問が起きた。「国の政策が間違っているのではないか」と思い、農林水産省へ就職するきっかけとなった。
舟山氏はデータを示しながら、日本の食料自給率(カロリーベース)が1966年の68%から現在の38%へ下がっていることは、食料安全保障の観点から大きな問題だと述べた。日本の農地は、現在400万㌶だが、輸入分は900万㌶に相当するという。世界の食料事情として、例えば、米国のトウモロコシは、現在、餌に40%、燃料に40%、食品用に10%が向けられ、食品以外の利用が多い。もし不作で自国で調達が困った場合、日本に輸出してくれるだろうかと疑問を投げかけた。日本は、窒素、リン酸、カリといった肥料もロシア、中国、ベトナムなどの外国から購入しているが、輸入できなくなった場合、日本の農業は壊滅的な打撃を被ることになる危険性を指摘した。
1990年に農水省に入庁して最初の配属されたのが国際部で、情報集めで外務省に赴き、当時、北米2課にいたのが、雅子さま(現皇后陛下)と触れ合う機会になったことを紹介した。
2000年に、10年間勤務した農水省を結婚を機に退職、夫の実家のある山形県小国町に来た。国際部にいた時の上司が鹿野道彦氏(故人、元衆議院議員)と知り合いで、山形選挙区から参議院議員選挙に出馬する人がいないと鹿野氏から相談を受けた上司は、「俺の部下が山形県にいる」と紹介したのが舟山氏だった。当時、舟山氏には2歳と0歳の子供がいて、立候補の打診に「それは無理」と断った。しかし、ある知り合いの農家の人から、「やってみたらいいのではないか。山形県の半分の50万人の女性の中で、一人声がかかったというのはすごいチャンス。あなたの人生にマイナスにはならない」とアドバイスされた。夫も「いいんでは」と応援してくれたという。2004年7月の選挙に立候補、相手は超ベテラン議員で、その時は敗れて挫折を味わった。しかし、その選挙戦を通して、あちこちでいい人に出会い、人と関わっていくことで、人生のチャンスを作っていくかもしれない、楽しいことだ」と考えるようになった。
ここで舟山氏は、「悩んだ時は新しいことに挑戦する。プラスはないかもしれないが、マイナスはない」と強調した。わからないことがあるとスマホですぐに調べる癖がある。ただ、「どの情報が正しいのか、情報がない時代より難しい」という。それらの情報を口に出して、コミュニケーションを通して、正しい情報を得ているとした。
昨年10月31日に行われた衆議院選挙で、山形2区(比例東北)から国民民主党公認で立候補、当選した菊池大二郎氏を取り上げ、選挙の3週間前に立候補表明、その決断が当選というチャンスを作ったと述べた。
最後に、1963年8月28日、人種差別撤廃を訴えたワシントン大行進の際に、「私には夢がある」という有名な演説を行い、後にノーベル平和賞を受賞したキング牧師を取り上げ、「夢を語り、人に伝える」ことの大切さを説いた。
講義後に会場からは「山形県で女性が活躍するにはどのような条件が必要か」、「食料自給率を上げるために学生としてできることは何か」、「山形県の活気を引き上げるためにはどうしたらいいか」などの質問が出された。舟山氏は、「まずは関心を持ち、小さな声を上げること、何かのチャリティー運動に参加することが大切だ」とアドバイス。
講座終了後、舟山氏は米沢女子短期大学、米沢栄養大学学生6人との1時間あまり意見交換会を行い、「国会議員は1年を通して何をしているのか」、奨学金を支給してもらっている学生からは、「親の扶養家族になるよう、アルバイト代は103万円を超えないようにきたが、103万円の上限見直しで奨学金も変わるのか」などの質問が出された。
意見交換会に参加した米沢女子短大英語英文学科1年の小林日世子さんは、「舟山議員のお話は大変に面白くて、今まで政治は授業で学ぶ程度で自分としては壁があったのですが、話を聞いてより身近に感じられるようになりました。若者の声で政治が変わるとお聞きして、自分もより政治に関心と興味を持って生活していきたいと感じました」と感想を述べた。