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山形県を襲った2022年8月3日の豪雨災害により、米沢駅と坂町駅を結ぶ米坂線は、現在橋の崩落等により今泉駅間と坂町駅間がバスによる代替運行となっている。
すでに不通となって2年半になるが、復旧への具体的な道筋がまだ見えない中、米坂線復活に向けた機運の醸成を図ろうと、やまがた鉄道沿線活性化プロジェクト推進協議会置賜ワーキングチーム(事務局:置賜総合支庁総務企画部総務課連携支援室)が主催して、2月17日午後の2回、同じく豪雨災害で被災した只見線の写真を撮影し、只見線や沿線の魅力を発信し、復旧に大きな原動力となる働きを行った男性を扱ったドキュメンタリー映画「霧幻鉄道 只見線を300日撮る男」(監督・撮影 我孫子亘)の上映会が開催された。
当日午後1時半からの上映会には、新潟県関川村、天童市など置賜地方以外からの参加者を含む30人余りが参加し、午後3時半からの2回目には、置賜農業高校の先生、生徒らが参加した。
(写真左=1回目の上映会に集まった人たち)
「霧幻鉄道 只見線を300日撮る男」は、2011年7月に豪雨災害で被災した只見線を活性化しようと、郷土写真家の星賢孝さんの日常活動を取り上げたドキュメンタリー映画で、2021年制作、2022年7月に劇場公開され、同年10月1日の只見線開通に大きな役割を果たした。
我孫子監督は、只見線沿線の四季の美しさと星さんの只見線に寄せる愛情を、美しい映像描写でドキュメンタリー映画にまとめていた。とりわけ、奥会津の絶景とも言える山間を只見線が走り抜けて行く様は、まるで別世界に誘っていくようだ。
(写真右=米坂線の早期復旧を求める署名)
星さんは、インバウンドで訪れた台湾の人たちが只見線で撮影した写真のコンテストを行い、台湾でその写真を展示した。その会場には何と10日間で、1万3000人もの来場者があった。日本のインバウンド観光は、日本の食や温泉、歴史スポットなどが一般的だが、外国人にとって写真コンテストのような楽しみ方があるのかと感じ入ってしまう。そのことで単に観光に来てもらうだけでなく、国を超えた継続的な相互交流にもつながる。
映画の中で、星さんが「只見線が全線開通しても空気を運んでいるのでは、今度は本当に廃線になる。」という言葉が印象的だった。只見線の復旧により、自主的にボランティアガイドをする人や沿線の人たちが雪の中で灯火を照らして一本の電車を待つなど、只見線を応援する仲間を紹介していた。この電車のために、1日かけて作った舞台だったが、電車には乗客がいなかった場面が映し出された。しかし、その乗客のいない電車に手を振る人たちがいて、只見線を愛する人たちの熱い心が観客に伝わってくる。地元の人たちの只見線への認識が根本から変わった。上映時間80分はあっという間に終わってしまった。
会場では、署名ブースが設置されたほか、昨年6月から募集した「わたしたちの米坂線」エピソード集が無料で配布され、米坂線応援ソングCDが販売された。