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米沢市上杉博物館(曽根伸之館長)は、4月19日(土)から6月22日(日)まで、特別展「上杉家の御殿〜城・藩邸・伯爵邸〜」を開催している。展示は、前期(4月19日〜5月18日)と後期(5月24日〜6月22日)で、展示資料の9割以上を展示替えする。前期展示は44点を展示し、うち5点は通期展示。
展示構成は、①米沢城の御殿②桜田上屋敷③麻布中屋敷と白銀下屋敷④上杉伯爵邸、の4つからなり、米沢藩上杉氏の住まいを通して、上杉家の人々の暮らしと儀礼、藩士の職制や仕事ぶりを紹介する内容である。
(写真右=米沢城の絵図)
江戸時代、米沢城の御殿は上杉家当主の生活や儀式の場であり、また藩政を行う中枢の場所だった。江戸に住む正妻に対して、米沢に住む側室との私的生活の場でもある。
今回の展示での見所は、米沢城や江戸藩邸の精緻で美しい平面図。特に米沢城の大判の城絵図を見ることで、第9代藩主上杉鷹山がどの場所で、どのような生活を送り、藩政改革に取り組んだのかを紹介する。藩主になった鷹山の藩政改革に反対する重臣たちが起こした「七家騒動」の舞台とは、一体米沢城のどこだったのか。記録はないが米沢城の絵図を眺めるだけで、事件の舞台の想像が大いに膨らんでくる。
4月18日に開催された内覧会では、同館主任学芸員の佐藤正三郎氏が、「上杉鷹山はおそらく奥御殿で寝ていただろう」と述べる。そこには8畳の部屋が2、3つあった。米沢城本丸で一番大きな部屋は、「表御座の間」と言われる120畳のもので、そこは藩主と家臣が公式の場面で相対する部屋だった。
米沢藩4代藩主上杉綱憲(吉良上野介の子)の時代には、米沢城の中に能舞台やお茶室が作られたが、上杉鷹山の改革の時にはそれは経費節減のために畳むこととなった。
江戸では、江戸城のすぐ隣接場所にあった上屋敷は「桜田御屋鋪」と呼ばれ、時に将軍の御成や幕府の重臣が訪れる場所でもあった。そこに住まう藩主や上杉家の人々を警護したり、生活を支えた藩士や奥勤めの女性たちが起居を共にした。江戸には、上屋敷のほかに、中屋敷、下屋敷があった。
(写真左=江戸上屋敷の桜田藩邸)
桜田御屋鋪総御絵図(上杉文書、米沢市上杉博物館)の屋敷の見取り図を見ると、中心部に藩主の私的な住まいが配置され、屋敷の四方を取り囲むように配置されている家臣の住む建物などが描かれている。御殿の構造、構成、配置などを見ることで、部屋ごとの機能や仕事ぶりを垣間見るようだ。火事が多い江戸のため、火事の時に働く衣装なども展示されていて面白い。
(写真右=江戸藩邸で使用された火消し装束)
佐藤学芸員は、「江戸の桜田屋敷の絵図を見ると客間がやたらあり、お客さんの来訪が多かったのではないか」と述べている。また尾張から来た姫に付いてきた家臣らのために、屋敷の中にその住まいとなる小屋を作ったことや、米沢藩の場合、江戸の藩邸で働くに家臣たちは100日交代で米沢から出かけ、ずっと江戸詰めで働く家臣は少ないというエピソードも紹介した。
明治維新を経て廃藩置県がなされると旧藩主は東京に移ることを強制されたが、その後に許され、上杉家は東京から米沢に戻り、その居宅となったのが上杉伯爵邸(国登録有形文化財)である。上杉伯爵邸は、大正8年に発生した米沢大火により一度焼失したが、同14年に再建され、令和7年は再建から100年を迎える。
上杉家文書の「八月廿三日御吉辰二付御婚礼御用諸事量帳」には、明和6年に江戸、米沢で行われた上杉鷹山の婚礼のお祝いの献立が記載されている。平成17年に再現された料理が上杉伯爵邸で披露されたが、その内容を見ると、鮎、蒸鳥(鴨)、松茸、敷味噌(アワビ・松茸・青豆)他で、味噌汁は(つみれ・大根他)、煎海老・鯛、吸物(鯛・柚子)、菓子(有平糖・若緑)他と、豪勢なメニューが並んでいる。米沢城の表御座の間で、重定らに振る舞われたとある。
米沢市上杉博物館・上杉伯爵邸連携企画として、「上杉伯爵邸100年の時を開く」と題して、歴史・建築・食文化解説付きツアー(6月7日10時〜午後2時30分 料金7,000円:特別展入館料、食事代込み、飲み物代別)を開催する。解説は、山形大学工学部教授 永井康雄氏、上杉伯爵邸代表取締役 遠藤勲氏、米沢市上杉博物館主任学芸員 佐藤正三郎氏が担当する。
また4月26日(土)〜6月22日(日)まで午前9時から午後5時まで、パネル展示(見学無料)、邸内見学(おすすめ時間 10時〜11時、14時〜16:30)、特別展半券持参で上杉伯爵邸・和庭、上杉博物館内クルチュール、上杉城史苑カフェ・ル・シエル、レストラン・アビシスの施設で、50円引きのサービスを実施する。(4/26〜6/22)
申し込みは、上杉伯爵邸 TEL 0238−21−5121
上杉博物館では、6月8日(日)午後2時〜午後4時まで、伝国の杜2階大会議室において、山形大学工学部教授 永井康雄氏を迎えて講演会を開催する。テーマは、「上杉伯爵邸の魅力と見どころ〜近世から近代へ」。定員80名。
申し込みは、米沢市上杉博物館 TEL 0238−26−8001