米沢藩第9代藩主上杉鷹山(ようざん)が、寛政8年(1796)9月6日、米沢を3度目の訪問となる師細井平洲を米沢の郊外で出迎え、労をねぎらった寺として知られる米沢市関根の岩上山普門院(髙橋隆文住職)で、4月3日、同院の本尊が修復されるために約250年ぶりに運び出されました。
真言宗である同院は、仁寿3年(853)の創立で、現在地にお寺が建てられたのは伊達時代の約450年前となり、現在の本堂は、江戸時代に火災で消失したことから、寛政8年(1796)に上杉家によって再建されたものです。
普門院は、令和元年より本堂保存修理工事が行われていますが、本尊を庫裏に仮安置する運びの中で大きな損傷が確認され、本格的な修復を行うことにしたものです。
本尊である木造大日如来坐像は、江戸時代の寛政年間(1789〜)に、湯殿山本道寺(西川町)から普門院に贈られたもので、湯殿山の真言密教が米沢まで及んでいたことを証明するものです。また大日如来像は真言密教において最高の仏様であり、仏教美術としても価値あるものとなっています。
昨年(令和5年)4月、専門家が状態調査を行い、接着不具合、不安定な安置、部材の遊離、割れ、塗膜の剥離、下地の露出、鉄錆、虫食い、汚れなどの深刻な損傷が確認され、倒壊のおそれがあることから修復を決定しました。
この日は、修復にあたり、大日如来坐像の閉眼供養を行い、法要と参列者による焼香が行われました。修復にあたる東北古典彫刻修復研究所(牧野隆夫所長、上山市)の修復師3名が木造大日如来坐像を丁寧に解体と梱包を行い、トラックに運び出しました。
修復には約1年かかる予定です。修復の費用は約700万円を見込み、檀信徒及び4月10日頃からスタート予定のクラウドファンディングで寄付を呼びかけることにしています。